講演情報
[P-080]高齢者における残存歯数と新規骨折の発生との関連
○土山 雄司1、大野 彩2、下村 侑司2、大森 江3、坂本 和基3、福徳 朗大1、大野 充昭1、窪木 拓男1 (1. 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 インプラント再生補綴学分野、2. 岡山大学病院 新医療研究開発センター、3. 岡山大学病院 歯科・口腔インプラント科部門)
【目的】
本研究は,高齢者における残存歯数と新規骨折発生との関連を明らかにすることを目的とし,商業的に入手可能な行政請求および健康診断データを含むDeSCデータベース(DeSC Healthcare, Inc.)を使用し,過去起点の前向きコホート研究を行った。
【方法】
2018年9月〜2019年8月までに受診データを有している65歳以上の者のうち,初回受診月を含む過去6ヶ月のベースライン(BL)期間に,骨折病名が存在しなかった者を対象とした。歯科受診データおよび健診・問診データがない者,成人骨軟化症・骨関連悪性/良性新生物・脳血管疾患の病名が存在する者は除外した。曝露要因はBL期間の歯科受診データから抽出した残存歯数とし,20歯以上/10〜19歯/10歯未満に分類した。基準月から2024年1月までの観察期間中に新規骨折が確認された者をイベント発生とした。観察期間中に死亡,またはデータベースから脱退した者は,最終の受診データをもって観察を打ち切った。骨折に該当する国際疾病分類(ICD-10)コードが確認された場合を新規骨折発生と定義し,初回骨折発生月を記録した。対象者のBL特性として,初回受診月の年齢,性別,BL期間中の骨粗鬆症・関節リウマチの病名の有無,身長,体重,BMI,喫煙歴の有無,主観的咀嚼能力を抽出した。まず,対象者のBL特性を新規骨折の発生有無別に要約し,カイ二乗検定とウィルコクソンの順位和検定を用いて比較した。また,残存歯数の3カテゴリーで分け,カプランマイヤー法を用いて生存曲線を描き,ログランク検定を用いて累積新規骨折発生率を比較した。
【結果と考察】
解析対象は250,298名(平均年齢73.3±6.4歳,男/女:102,630/147,668名)で,このうち57,293名(22.9%)に新規骨折が発生した。新規骨折発生群では,非発生群に比べてBMIが低く,残存歯数が少なく,主観的咀嚼状態が不良であった。累積新規骨折発生率は,20歯以上が25.2%,10〜19歯が31.3%,10歯未満が33.4%で,10〜19歯/10歯未満の群では20歯以上の群に比べて累積発生率がそれぞれ6.1/8.2%,有意に高かった(p<0.0001)。以上より,日本の高齢者において残存歯数が20歯未満であることは,あらゆる骨折の新規発生と関連する可能性が示唆された。
(COI開示:なし)
(岡山大学 倫理審査委員会承認番号 研2409-002)
本研究は,高齢者における残存歯数と新規骨折発生との関連を明らかにすることを目的とし,商業的に入手可能な行政請求および健康診断データを含むDeSCデータベース(DeSC Healthcare, Inc.)を使用し,過去起点の前向きコホート研究を行った。
【方法】
2018年9月〜2019年8月までに受診データを有している65歳以上の者のうち,初回受診月を含む過去6ヶ月のベースライン(BL)期間に,骨折病名が存在しなかった者を対象とした。歯科受診データおよび健診・問診データがない者,成人骨軟化症・骨関連悪性/良性新生物・脳血管疾患の病名が存在する者は除外した。曝露要因はBL期間の歯科受診データから抽出した残存歯数とし,20歯以上/10〜19歯/10歯未満に分類した。基準月から2024年1月までの観察期間中に新規骨折が確認された者をイベント発生とした。観察期間中に死亡,またはデータベースから脱退した者は,最終の受診データをもって観察を打ち切った。骨折に該当する国際疾病分類(ICD-10)コードが確認された場合を新規骨折発生と定義し,初回骨折発生月を記録した。対象者のBL特性として,初回受診月の年齢,性別,BL期間中の骨粗鬆症・関節リウマチの病名の有無,身長,体重,BMI,喫煙歴の有無,主観的咀嚼能力を抽出した。まず,対象者のBL特性を新規骨折の発生有無別に要約し,カイ二乗検定とウィルコクソンの順位和検定を用いて比較した。また,残存歯数の3カテゴリーで分け,カプランマイヤー法を用いて生存曲線を描き,ログランク検定を用いて累積新規骨折発生率を比較した。
【結果と考察】
解析対象は250,298名(平均年齢73.3±6.4歳,男/女:102,630/147,668名)で,このうち57,293名(22.9%)に新規骨折が発生した。新規骨折発生群では,非発生群に比べてBMIが低く,残存歯数が少なく,主観的咀嚼状態が不良であった。累積新規骨折発生率は,20歯以上が25.2%,10〜19歯が31.3%,10歯未満が33.4%で,10〜19歯/10歯未満の群では20歯以上の群に比べて累積発生率がそれぞれ6.1/8.2%,有意に高かった(p<0.0001)。以上より,日本の高齢者において残存歯数が20歯未満であることは,あらゆる骨折の新規発生と関連する可能性が示唆された。
(COI開示:なし)
(岡山大学 倫理審査委員会承認番号 研2409-002)