講演情報

[O-2-06]一般地域住民を対象とした軽度認知症疑いのある高齢者の味覚閾値の検討
       〜2022年度岩木健康増進プロジェクト~

○篠田 真美1、山添 淳一2,4、川端 由子3、宮崎 明子9、高井 信吾3,6、山内 一崇7、川端 二功8、松原 篤7、重村 憲徳3,5 (1. 九州大学大学院歯学府口腔機能解析学分野、2. 九州大学大学院歯学研究院口腔機医療連携分野、3. 九州大学大学院歯学研究院口腔機能解析学分野、4. 九州大学オープンイノベーションセンター、5. 九州大学五感応用デバイス研究開発センター、6. 九州大学歯学部DDRセンター 、7. 弘前大学大学院医学研究科耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座、8. 弘前大学農学生命科学部国際園芸農学科、9. ハウス食品グループ本社)
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【目的】
 認知症の進行に伴い食欲不振に陥る認知症患者が多く認められる。味覚の変化が関与していると考えられるが,MCIの段階での認知機能と味覚閾値の関連性について一定の見解は得られていない。今回,地域健診において高齢者の認知機能低下と味覚閾値の関連性について調査したので報告する。
【方法】
 2022年岩木健康増進プロジェクトに参加し,「あたまの健康チェック」と「味覚検査」を受けた191名の65歳以上の高齢者を対象とした。認知機能の判定には「あたまの健康チェック」を利用してMPIスコア(認知機能指数)を算出し, 49.8≦をMCI疑い,50.2≧を正常とした。味覚検査は5基本味(甘味,酸味,塩味,うま味,苦味)の各3濃度(1:低濃度,2:中濃度,3:高濃度)の味質溶液を用い,全口腔法で実施した。味質溶液で3以下の濃度で認知した群を正常群とし,3を認知できなかった群を誤回答群とした。さらに正常群を認知できた味質溶液濃度によって1:高感受性群,2:中程度感受性群,3:低感受性群に分類した。味覚感受性と認知機能低下との関連性についてχ2検定で解析した。また,味覚を目的変数とし, 年齢,性別, BMI,MPIスコア,食塩相当量,高血圧,収縮期血圧,喫煙を説明変数として多変量解析を行った。
【結果と考察】
 各味質の正常群とMCI疑い群の味覚オッズ比は甘味:0.691,酸味:0.964,塩味:0.458,うま味:0.511,苦味:0.375となり,MCI群で各味質の味覚感受性低下を示す傾向が認められた。また,味覚の高感受性群と誤回答群を対象としたオッズ比は塩味:0.148,苦味:0.143と有意な関連を認めた。さらに,多変量解析の結果では,甘味,酸味,塩味,5味合計とMPIスコアとの関連を認めた。
 本調査の結果より,味覚全体の味覚閾値の上昇とMCIの進行との間に相関がある可能性が示唆された。特に, 塩味の味覚低下とMCIとの関連が両解析において有意に認められたため, 塩味閾値上昇がMCI早期発見の指標となり, 認知症進行予防と不適切食生活予防のための食支援早期介入に繋がる可能性がある。
(COI:開示なし)
(弘前大学大学院医学研究科倫理委員会2021−166−2)
(九州大学医系地区部局観察研究倫理審査委員会21160ー01)