講演情報

[O-2-07]咀嚼模擬装置による「カムカム食」咀嚼時の筋活動の定量的推定 第一報-方法の開発と妥当性の検証-

○神田 玲奈1、井上 元幹1、小城 明子2、松尾 浩一郎3 (1. 株式会社 明治 、2. 東京医療保健大学、3. 東京科学大学)
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【目的】
 オーラルフレイル予防プログラムの一環で開発された,噛みごたえを強化した食品(カムカム食)はその物性から咀嚼時の筋活動が対照食品より増加することが知られている。本研究は,咀嚼プロセスシミュレータORAL-MAPS(OM)によって,カムカム食と対照食品を咀嚼する際の筋活動を定量的に推定し,その妥当性の検証を目的とした。
【方法】
 カムカム食としてレンコン入りハンバーグとアーモンド入りつくね,対照食品として一般的なハンバーグ,つくねを試料とし,各計測に5±0.5g使用した。OMは,体温程度に調温した環境で人工唾液を加えつつ食品を反復圧縮して咀嚼を模擬し,圧縮毎の荷重[N]を計測することで,食品物性を評価する装置である。本研究では,圧縮力上限400N,人工唾液添加流量4mL/min,圧縮回数30回,圧縮頻度1回/秒の運転条件に設定し,同条件で3回ずつ実施した。圧縮毎に荷重の最大値(最大荷重)と,荷重と時間[s]の積である力積[N・s]を算出し,試験毎に最大荷重の平均と力積の和(総力積)を求め,OMから得られる指標とした。また,同食品を用いた先行研究を参照し,若年層の咀嚼筋筋活動のデータから,最大荷重の平均と総力積に対応する指標として,振幅の平均と総筋仕事量を抽出した。OMとヒトを比較するため,指標毎に,4種類の試料における全ての組み合わせで試料間の比を求め,OMの指標から計算される比とヒトの指標から計算される比の差分を求めた。さらに,OMとヒトから得られるデータの相関性をスピアマンの順位相関係数により確認した。
【結果と考察】
 各指標におけるOMとヒトのデータの比の差分は,最大荷重の平均と振幅の平均では差分の平均値は0.3(SD=0.3)であり,総力積と総筋仕事量では差分の平均値は0.1(SD=0.3)であったため,ヒトとOMから得られるデータは類似していることが示唆された。また,最大荷重の平均と振幅の平均の相関係数は0.75(p<0.05)で,総力積と総筋仕事量の相関係数は0.73(p<0.05)で両者とも有意な正の相関を示した。
 以上から,OMから得られる指標によって,カムカム食と対照食品を咀嚼する際の筋活動を定量的に推定する方法は妥当であると判断した。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)