講演情報

[SY5-1]認知症の緩和ケアアプローチ

○平原 佐斗司1 (1. 東京ふれあい医療生活協同組合 オレンジほっとクリニック)
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【略歴】
1987年 国立島根医科大学卒、同第2内科、六日市病院、平田市立病院、帝京大学病院第2内科を経て、梶原診療所で地域医療、在宅医療に従事。現在、東京ふれあい医療生活協同組合研修・研究センター長、同オレンジほっとクリニック地域連携型認知症疾患医療センター長日本認知症の人の緩和ケア学会理事長、総合内科専門医、日本在宅医療連合学会副代表理事、日本エンドオブライフケア学会副理事長、在宅医療専門医・指導医, プライマリケア認定医・指導医 気管支鏡専門医、アレルギー専門医、東京医科歯科大学、聖路加国際大学臨床教授編著として認知症の緩和ケア、エンド オブ ライフ ケア、医療と看護の質を向上する認知症ステージアプローチ入門、医師・看護師のための認知症プライマリケアまるごとガイド(中央法規)、認知症の人に寄り添う在宅医療(クリエイツかもがわ)、認知症plus 緩和ケア(看護協会出版会)等多数
《認知症の緩和ケアニーズ》超高齢社会を迎えた先進国では、急増する認知症とどのように向き合うかは大きな課題となっている。今後世界では、2016年から2060年の間に70歳以上の高齢者の緩和ケアニーズが倍増し、とりわけ認知症の緩和ケアのニーズは世界で約4倍に、先進国でも3倍以上に増加すると予測されている(ランセット委員会報告:2019)。先進国では認知症はこれからの緩和ケアの最大の対象と認識されるようになった。《認知症の緩和ケアアプローチとチームアプローチ》認知症の緩和ケアアプローチは「単に身体的苦痛をとる治療やケアにとどまらず、認知症の行動・心理症状(BPSD)、合併する疾患、および健康問題の適切な治療を含む、認知症の全ての治療とケアを意味するもの」(EAPC:2015)とされている。つまり、末期の肺炎の呼吸困難や経口摂取困難、疼痛などの身体的苦痛の緩和にとどまらず、診断後のスピリチュアルな苦痛、骨折や肺炎など合併症による急性期の痛みや呼吸苦などの苦痛、BPSDとして表出される身体・心理的苦悩への対応、鬱、不安、不眠、孤独などの精神的な苦痛、家族のケアなど認知症の人と家族が長い認知症の旅路の中で体験するあらゆる苦痛を含むものである。 認知症の緩和ケアアプローチの実践には、暮らしの場である地域(自宅)や施設、急性期医療の場である病院などの場を超えて、多くの医療・介護の専門職のチームアプローチが欠かせない。《認知症の緩和ケアと歯科領域の専門職の役割》重度期以降の認知症の人の最大の苦痛は、嚥下障害による食の問題、誤嚥性肺炎による呼吸困難である。認知症は病型や病期によって多様な嚥下障害を呈し、継続的な食支援が欠かせない。肺炎急性期のサルコペニア嚥下障害時の口腔ケアの重要性、誤嚥性肺炎の予防のための口腔ケア、重度から末期の食支援(コンフォートフィーディングの実践など)において歯科領域の専門職の果たす役割は大きい。