講演情報
[SY8-1]咀嚼能力のライフステージ評価と予防医療への応用可能性 ― 色変わりガムの実践と展望
○濵 洋平1 (1. 東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 高齢者歯科学分野)
【略歴】
2013年 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 博士課程修了 博士(歯学)
2014年 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 高齢者歯科学分野 特任助教
2019年 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 高齢者歯科学分野 助教
2024年 東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 高齢者歯科学分野 講師(現職)
2013年 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 博士課程修了 博士(歯学)
2014年 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 高齢者歯科学分野 特任助教
2019年 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 高齢者歯科学分野 助教
2024年 東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 高齢者歯科学分野 講師(現職)
咀嚼能力は、栄養摂取、認知機能、身体活動、さらには全身の健康状態の維持とも密接に関係しており、特に高齢期においてはフレイルや要介護の予防に関連する可能性があるとされている。しかし、その意義は高齢者に限らず、小児期や壮年期においても食習慣や食品摂取との関連が示唆されており、ライフステージ全体を通じて捉えるべき機能として注目されつつある。
こうした背景のもと、咀嚼能力を簡便に評価する手法として、色変わりガム(咀嚼チェックガム®)が広く用いられている。これは、咀嚼によって緑から赤へと色が変化するガムであり、一定条件下での咀嚼後の色変化をもとに、咀嚼能力を定量的に評価することが可能である。近年では、スマートフォン等で撮影した画像からその色変化をウェブアプリケーションにより自動解析できるようになり、従来は研究者や医療従事者に限られていた咀嚼能力の評価が、地域や教育現場、家庭などにも応用可能となった。
我々はこの咀嚼チェックガムを用いて、未就学児、若年期、壮年期、前期高齢期、後期高齢期に至るまでの約900名を対象とした、ライフサイクル全体をカバーする大規模な調査を実施した。得られたデータからは、ライフステージごとの口腔機能の分布や性差、また年代による差異が明らかとなり、将来的な疾患リスクの早期抽出や予防的介入への応用の可能性が示唆された。一方で、他機関による取り組みとして、咀嚼チェックアプリを活用した大規模な小児集団への応用も国内で進められており、数千人規模の小学生を対象とした調査では、咀嚼能力の低さと肥満との関連が報告されている。こうした先行研究は、我々自身の加齢期における評価研究と相補的な関係にあり、ライフコース全体にわたる機能評価モデルの構築にも寄与し得ると考えられる。
さらに現在、我々は咀嚼チェックガムによる咀嚼能力評価に、年齢や質問紙調査などの情報を統合し、フレイル、サルコペニア、口腔機能低下症といった健康リスクのスクリーニング精度の検討を進めている。咀嚼能力の定量化を通じて、個別化された予防的介入の可能性を追求しており、口腔機能評価を介したプレシジョン・ヘルスの実装にもつながると考えている。こうした取り組みは、「日常的でありながら見過ごされがちな機能」である咀嚼を、社会全体でモニタリング可能な仕組みとして普及させる一助となるだろう。
なお、近年では英語版アプリもリリースされ、国際的な評価研究や疫学調査への応用も可能となった。こうしたグローバルな展開は、口腔機能評価の国際標準化と、世界的なヘルスケア水準の向上に資するものであり、臨床・研究・教育の各分野において有用性が高いと考えられる。
本発表では、ライフステージを横断する咀嚼能力評価の実践的知見をもとに、咀嚼チェックガムとデジタル技術の統合による展開、そしてその先にある社会実装や国際的応用の可能性について展望したい。
こうした背景のもと、咀嚼能力を簡便に評価する手法として、色変わりガム(咀嚼チェックガム®)が広く用いられている。これは、咀嚼によって緑から赤へと色が変化するガムであり、一定条件下での咀嚼後の色変化をもとに、咀嚼能力を定量的に評価することが可能である。近年では、スマートフォン等で撮影した画像からその色変化をウェブアプリケーションにより自動解析できるようになり、従来は研究者や医療従事者に限られていた咀嚼能力の評価が、地域や教育現場、家庭などにも応用可能となった。
我々はこの咀嚼チェックガムを用いて、未就学児、若年期、壮年期、前期高齢期、後期高齢期に至るまでの約900名を対象とした、ライフサイクル全体をカバーする大規模な調査を実施した。得られたデータからは、ライフステージごとの口腔機能の分布や性差、また年代による差異が明らかとなり、将来的な疾患リスクの早期抽出や予防的介入への応用の可能性が示唆された。一方で、他機関による取り組みとして、咀嚼チェックアプリを活用した大規模な小児集団への応用も国内で進められており、数千人規模の小学生を対象とした調査では、咀嚼能力の低さと肥満との関連が報告されている。こうした先行研究は、我々自身の加齢期における評価研究と相補的な関係にあり、ライフコース全体にわたる機能評価モデルの構築にも寄与し得ると考えられる。
さらに現在、我々は咀嚼チェックガムによる咀嚼能力評価に、年齢や質問紙調査などの情報を統合し、フレイル、サルコペニア、口腔機能低下症といった健康リスクのスクリーニング精度の検討を進めている。咀嚼能力の定量化を通じて、個別化された予防的介入の可能性を追求しており、口腔機能評価を介したプレシジョン・ヘルスの実装にもつながると考えている。こうした取り組みは、「日常的でありながら見過ごされがちな機能」である咀嚼を、社会全体でモニタリング可能な仕組みとして普及させる一助となるだろう。
なお、近年では英語版アプリもリリースされ、国際的な評価研究や疫学調査への応用も可能となった。こうしたグローバルな展開は、口腔機能評価の国際標準化と、世界的なヘルスケア水準の向上に資するものであり、臨床・研究・教育の各分野において有用性が高いと考えられる。
本発表では、ライフステージを横断する咀嚼能力評価の実践的知見をもとに、咀嚼チェックガムとデジタル技術の統合による展開、そしてその先にある社会実装や国際的応用の可能性について展望したい。