日本保育学会第79回大会

ご挨拶

 2026年度における日本保育学会第79回大会は、東京大学が担当させていただくことになりました。特に、大学院教育学研究科附属発達保育実践政策学センター(CEDEP)が中心となって、準備・実施・運営等を進めさせていただきます。このセンターは、日本学術会議第22期大型研究計画に関するマスタープランにおいて「『乳児発達保育実践政策学』研究・教育推進拠点の形成:発達基礎の解明に基づく乳児期からの良質な保育・養育環境の構築」という申請テーマが採択されたことを受けて、2015年7月に初代センター長の秋田喜代美先生の下、設立されたものであります。文字通り、「発達保育実践政策学」という新たな統合学術分野を確立し、乳幼児の健やかな発達や充実した保育・幼児教育の実践およびそのための政策立案・改善等につながる先端的研究を推進することを設立趣旨としております。 

 発足時、その基本的な方向付けに関して様々な議論が重ねられた訳ですが、それを通じて掲げられたのが「あらゆる学問は保育につながる」というスローガンでした。立ち上げ当時、そこに関わった私どもの思いおよび願いは、そのまま書名となって2016年に東京大学出版会から発刊されておりますが、今度の大会は、初心に立ち返り、大会テーマをそのまま「あらゆる学問は保育につながる」とさせていただきました。私も最初期からこのセンターに関わっておりますが、当初、さすがに「あらゆる学問は」というのはいささか言い過ぎではないかと率直に思ったことがありました。しかし、セミナー等を積極的に開催し、従来、子どもの発達や保育・教育等との接点が希薄とされてきた文理、様々な学問分野の先生方のお話を重ねてお伺いする中で、「あらゆる学問は」という文言は決して盛り過ぎではなく、幅広く異分野との架橋の潜在的可能性が実に豊かに拓けて在ることを確信しました。そして、私どもセンターの一つの指名が、文理、幅広く様々な学術的知見を、保育の未来に確実につなげていくことなのではないかという思いに至ったのであります。 

 今回の大会では、「あらゆる学問は保育につながる」というテーマに適ったシンポジウム等を複数、企画しております。普段、必ずしも直接、保育・幼児教育とは関わりのない話題にできるだけ多くふれていただく中で、これからの子どもたちの未来につながる保育・幼児教育の新たな形を、大会に参加される皆様、それぞれが考え、模索していただく機会になればと思っております。言うまでもなく、現在、日本では、多くの保育現場が深刻な保育者不足の問題に喘ぎながら、その一方では、各種養成校において保育志願者が大幅に減少してきているという由々しき事態が生じております。こうした状況下において、私ども学としての保育に関わる者に求められること、それは、保育・幼児教育の重要性と可能性をしかと再認識し、確かな学術的根拠に基づきながら、広く社会に向けて、保育・幼児教育の豊かな魅力を、揺るぎない自信をもって語れるようになることなのかも知れません。今回の大会が、何らかの形で、その一助となればと切に願うものであります。 

 今大会は、オンラインでの開催となります。オンラインならではの制約が少なからず想定されるところですが、可能限り、様々な工夫を凝らすことを通して、円滑な運営を実現し、ご参加の皆様にとって、愉しく意義ある催しになるように最大限、努めさせていただく所存です。多くの皆様のご参加を心よりお待ちしております。 

一般社団法人日本保育学会第79回大会
実行委員長 遠藤 利彦