講演情報

[OS04-2]在宅医療DXの実装と地域連携の現状 -RPAによる院内自動化とアナログ運用の併存-

山戸 啓佑 (桜新町アーバンクリニック)
1995年 大阪府交野市生まれ
2019年 関西大学環境都市工学部卒業
2019年 オリジナル設計株式会社入社:自治体の上下水道計画・経営戦略策定業務に従事
2023年 医療法人社団プラタナスに入職:桜新町アーバンクリニック外来・在宅医療部の運営業務に従事
「骨太方針2025」や医療DX工程表では、医療現場でのICT活用による情報共有推進が示され、2024年度診療報酬改定でも「在宅医療情報連携加算」が新設されるなど、DXへの要請は高まっている。当院では昨年度、多職種連携ツール(以下、「連携ツール」)と電子カルテをRPAで連携させる独自のシステムを構築した。これにより訪問診療後の事務作業時間を劇的に短縮し、院内の「点」としてのDXは一定の成果を収めた。しかし、本運用を通じて、技術導入だけでは解決しきれない「地域連携の壁」が浮き彫りとなった。本発表では、当院のDX実装のプロセスと現場のリアリティについて報告する。
当院が構築したシステムは、医療事務が電子カルテから診療録を一括抽出し、RPAがそれを連携ツールへ自動投稿する仕組みである。この半自動化により、従来の手作業に比べ1日約100分の業務時間を削減できた。一方で、地域全体を見渡すとICTツール導入が進んでいない連携先も依然として多い。特に、高齢で単独運営を行っている居宅介護支援事業所などでは、新たなツール習得へのハードルが高く、従来のFAXによる情報共有が必須となるケースが散見される。その結果、院内業務の大部分はデジタル化され効率化されたものの、一部の連携先に対してはFAX送信というアナログ業務が残り続けることとなった。デジタル(連携ツール)とアナログ(FAX)の業務フローが混在する「二重運用」の状態が続き、業務手順の完全な一本化を阻んでいる。
政策が描く「全国的な医療DX」と、現場の「個々のITリテラシー格差」の間には大きな時差がある。ツール導入はゴールではなく、その後の「現場事情に合わせた運用の最適化」こそが実装の本質である。本発表では、RPA活用の実際を供覧するとともに、過渡期におけるハイブリッド運用の実情と、現場から見た「地に足のついたDX」のあり方について提言したい。