講演情報

[OS06-2]千葉市のおひとりさま支援 ~「おひとりさま支援の手引き」作成の経緯~

久保田 健太郎 (千葉市保健福祉局健康福祉部在宅医療・介護連携支援センター)
2002年、千葉市役所に入職。再開発事業、病院事業などの経験を経て、2009年度には政策研究大学院大学地域政策プログラムにて公立病院の経営問題を研究。
2015年、地域包括ケア推進課の新設に伴い異動し、在宅医療・介護連携推進事業や認知症施策の基盤整備に従事。
2018年には在宅医療・介護連携支援センターの設立に参画した。2021年の新型コロナウイルスワクチン接種推進室での危機対応を経て、2023年より現職。
現在は、千葉市在宅医療・介護連携支援センターにて、行政職員として政策企画や制度運用を担当するほか、行政と医療・介護現場をつなぐコーディネーターとしての役割を担っている。
【背景】政令指定都市である千葉市(人口約98万人)においても、単身高齢者の増加に伴い、身寄りのない高齢者の在宅療養支援が喫緊の課題となっている。キーパーソン不在の状況は、意思決定支援の困難さのみならず、入院時の身元保証、金銭管理、そして死後の遺体引き取りや遺品整理といった「家族の役割」を誰が担うかという問題を浮き彫りにした。現場の医療・介護専門職は、制度の狭間で法的権限を持たないまま支援を行わざるを得ず、特に死後の対応においては、善意の行動が法的なトラブルに繋がりかねないという強い不安を抱えていた。
【目的】本シンポジウムでは、現場の切実な声から生まれた「おひとりさま支援の手引き」の作成経緯とその活用実態を報告する。「千葉市在宅医療・介護連携支援センター」がいかにして法的・制度的課題を整理し、地域の専門職のニーズに対応したかを明らかにする。
【実践内容】当センターでは、年間約600件の相談事例を分析し、身寄りのない高齢者支援におけるリスクを類型化した。その結果、支援プロセスをフローチャート化し、各段階で確認すべき事項と利用可能な社会資源を網羅した「おひとりさま支援の手引き」を作成した。「死亡後」の対応では、警察や行政との役割分担を整理し、専門職が介入できる範囲と限界を明確化した。また、専門職向けの意思支援の手引きを作成したほか、人生会議の普及啓発に努めるなど、地域全体の支援力向上を目指している。
【結語】「おひとりさま」が安心して暮らすことができる地域を作るためには、個人の善意に依存しない組織的な対応と、法制度と現場をつなぐ具体的なツールが不可欠である。本手引きは、専門職が安心して最期まで伴走できる環境を整備し、結果として本人の尊厳を守る地域包括ケアの深化に寄与している。