講演情報

[OS08-1]血液疾患の在宅移行の潮流 ~在宅輸血から支持療法・緩和的化学療法、さらなる経済毒性・時間毒性の低減へ~

大橋 晃太1,2 (1.トータス往診クリニック, 2.NPO血液在宅ねっと)
2008年 東京医科歯科大学(現 東京科学大学)卒業
2008年 医療法人財団健和会 みさと健和病院 臨床研修
2010年 国立病院機構 東京医療センター 血液内科/緩和ケア内科
2015年 国立がん研究センター東病院 血液腫瘍科(外来担当)
2016年 トータス往診クリニック
前例なき高齢・多死社会を迎えている我が国において、地域包括ケアシステムの元、住み慣れた地域で最期まで過ごせる体制が構築されてきた。一方で、分子標的治療薬や免疫療法薬などの新規薬剤が多数登場し、殺細胞性の化学療法の時代から、高齢者や併存疾患のある患者に対しても、治療選択肢が提示される時代になり、専門医療からますます離れにくい状況になっている。特に血液疾患においては,化学療法や支持療法(輸血やG-CSF投与、ガンマグロブリン補充など)が患者のQOL の維持に必要な場合も多く、地域医療への移行の上で、専門医療と地域医療の連携が不可欠である。基幹病院の専門医と地域のかかりつけ医による、いわゆる「二人主治医制」が有効と考えられるが、血液内科においては地域医療側で勤務する医師が他科に比べて極端に少ないため、地域連携を難しくしている。二人主治医制が有効に機能するためにも,Community Hematologist(地域医療の現場で働く血液内科医)のキャリアパスを確立すること、地域医療でも、必要な輸血や化学療法の継続ができるような指針の作成・診療報酬面でのサポートなどが求められている。また、近年は治療における経済毒性・時間毒性という概念が広がり、通院・入院に要する時間や医療費、家族に及ぼす影響まで含めて考慮されるようになってきている。血液疾患の多くの治療が”Until PD”(治療効果がなくなるまで継続し続ける)であるからこそ、QOLを維持・向上するような治療継続が求められている。在宅医療は、このようなニーズを満たす可能性を秘めたツールであり、終末期だけの関わりから、より早期からの関わりに進化していくことが期待される。患者の幸福を増幅するような治療選択肢を提示するためには、在宅医療の役割は重要であるが、そのためには、病診連携・薬診連携・診診連携にもさらなる深化が求められている。