講演情報

[P1-12]老老夫婦時代のACPを再考する― 施設における夫婦同席の対話実践 ―

古賀 美佳, 川﨑 淳子 (株式会社flagMe)
【目的】ACPは、本人の意思を尊重する取り組みとして普及してきたが、高齢であることや周囲への配慮などから、将来の医療ケアに関する選択を他者に委ねる高齢者も少なくない。老老夫婦においては、長年にわたる夫婦関係と相互理解がある一方で、ACPは個人単位で論じられることが多く、夫婦単位でのACPの実践報告は限られている。高齢者施設における「夫婦同席によるACP」の実践を通じ、老老夫婦を意思決定の最小単位として捉えるACPの意義を検討する。【方法】2025年5月から12月にかけ、施設入居中の老老夫婦6組12名(平均年齢85.8歳、平均介護度2.1、うち1組は夫の病状変化に伴い2回実施)を対象に、ACP支援を専門とする第三者が中立的立場で夫婦同席の対話を行った。それぞれの価値観や人生の振り返りに加え、将来の医療・ケアに関する希望について、段階的に対話を重ねた。【結果】夫婦同席でのACPでは、互いを思いやる発言や、共有された人生経験を踏まえた意思表出が多く認められた。加えて、多くの例において、配偶者の存在そのものが「生きる理由」や「支え」として語られ、意思決定の背景にある価値観として明確化された。また、一方が十分な言語的表出や意思決定能力を有しない状況においても、配偶者が長年の関係性に基づき、相手の生き方や価値観を尊重しながら推定意思を語る場面が繰り返し確認された。【考察】老老夫婦によるACPは、個人の自己決定を補完し、関係性の中で意思決定を支える営みである。高齢者施設はその対話を可能にする重要な場であると同時に、本人と家族、医療ケア関係者をつなぐハブとして機能しうる。夫婦同席ACPは在宅・施設医療における新たなACPのあり方を示唆し、多職種連携における実践的意義も大きい。
なお、本研究は倫理委員会の承認を得て行われた。