講演情報

[SY01-1]在宅医療は地球の健康をも守る
〜今さら聞けない「プラネタリーヘルス」総論〜

太田 知明 (山梨勤労者医療協会 武川診療所)
亀田総合病院 研修医、整形外科
国立病院機構災害医療センター 整形外科
Wooridul Spine Hospital 脊椎外科
横須賀市立うわまち病院 救急科
山梨勤労者医療協会 武川診療所
「夏の訪問診療、独居高齢者の熱中症が心配でならない」「台風のたびに停電や浸水への備えに追われる」在宅医療の現場で、そんな実感を持つことはありませんか?今、私たちの「生活の場」を支える基盤である地球環境は、かつてない危機に直面しています 。
 本シンポジウムのテーマである「プラネタリーヘルス」とは、「人類の健康と地球環境の健康は相互に依存している」という考え方です。現在地球には、気候変動、生物多様性の喪失、大気汚染など多くの環境課題があります。一方で地球には人間が安全に活動できる限界域(プラネタリーバウンダリーズ)があり、多くの項目ですでにその限界を超えています。 特に気候変動は、単なる気温上昇に留まりません。自然災害の激甚化や住環境の悪化は、身体機能や社会基盤が脆弱な患者さんに最も深刻な影響を及ぼします 。患者さんを守るためには、疾患だけでなく、その背景にある地球の声に耳を傾ける必要があります 。 さらに、健康を守るはずの医療も温室効果ガス排出量の約4%を占め、環境破壊の「加担者」という側面を持っていることも無視できません 。
 実は、在宅医療こそが、この気候変動に最も積極的に取り組むべき分野です。なぜなら、私たちは環境変化の影響を受けやすい脆弱な集団を支える立場にあり、日頃から築いている地域連携のネットワークは、地域の気候変動対策において非常に強力な基盤となるからです。また、在宅医療を推進することは、環境にも経済にも負荷が大きい入院医療の抑制にも直結します。
 本シンポジウムでは、医療からの環境負荷を減らす「緩和策」と、変化する環境下で患者を守る「適応策」の両面から、在宅医療の役割を考えます 。地球の健康を考えることは、患者さんの「いのち」と「暮らし」を次世代へつなぐこと。プラネタリーヘルスの視点を持つことで、明日からの在宅診療が少し違って見えてきます 。