講演情報

[SY01-3]看護師が直面する気候危機と高齢者ケア~訪問看護ステーションから~

松本 こずえ (株式会社ドットライン)
・東京科学大学医学部附属病院
・新潟大学医学部保健学科看護学専攻
・新潟大学大学院保健学研究科博士前期課程
・特定非営利活動法人 日本医療政策機構
・株式会社ドットライン
在宅療養の場において、私たちが最も関わることの多い高齢者は、気候変動の影響を受けやすい集団とされています。近年、夏季(5~9月)の熱中症による救急搬送件数は年間約10万件に達しており、その約6割を65歳以上の高齢者が占めています。発生場所は屋内が最多(約4割)であり、高齢者にとって日常生活を送る住環境そのものが大きなリスク要因となっています。病院や施設は、空調管理や人的支援が整った「守られた環境」である一方、退院後に戻る自宅では、暑さや寒さ、湿度の調整を自身で行う必要があり、停電や断水、災害などの影響を直接受ける場でもあります。そのため、夏季の環境要因をきっかけに再入院に至るケースも少なくありません。このような背景から、在宅ケア従事者には心身の状況と同時に暮らしや環境を見る視点が求められます。日常的に患者さんやご家族と関係性を築き、生活を観察できる立場である在宅ケア従事者だからこそ、予防的介入や変化への早期対応が可能です。加えて、看護において特に重要なのは、極端な暑さ寒さなどの環境に”適応”した生活を送れるよう、在宅療養者に寄り添った支援を行うことです。生活背景や経済的理由から冷暖房の使用に困難を抱える方も多く、その方が実際に取り入れ可能な方法を共に模索する対話が、安心・安全な在宅療養につながります。さらに、災害や急変時の備えとして、有事の際にとるべき行動や避難先について話し合う過程そのものが、生活リスクを見直す機会となります。プラネタリーヘルスの視点は、ナイチンゲールが示した「自然治癒力を妨げない看護」の延長線上にあります。本シンポジウムを通じて日頃の実践を振り返り、未来志向の在宅ケアを考察します。