講演情報

[SY04-2]在宅医療におけるドクターカー導入の障壁と実装課題
【現行運用マニュアルと制度的制約の検討】

飯嶋 将史 (いいじま訪問診療クリニック 世田谷区二子玉川)
東海大学高度救命救急センターの救命救急科に入局。
救命救急医として、湘南の地でドクターヘリ、ドクターカー業務、重症外傷対応、集中治療に従事。
その後、川崎市の在宅診療所の勤務を経て、2023年にいいじま訪問診療クリニック世田谷区二子玉川 開業。
現在に至る。

「資格」
日本専門医機構認定 救命救急専門医
日本在宅医療連合学会認定専門医、指導医 評議員
日本プライマリ・ケア連合学会認定医、指導医 代議員
日本緩和医療学会 認定医
日本老年医学会認定 高齢者栄養認定医 
【背景】高度救命救急センターにおいてドクターカーは、院外事象における医師の迅速な現場到達、早期医療介入を可能とする体制として定着している。一方、在宅医療領域では、高齢化進展に伴い、急変時や重症例への医師の即時関与の必要性が増大している。しかし、医師の迅速到達手段としてのドクターカー(ホスピスカー)を在宅診療に適用する試みは限定的であり、制度的・運用的制約が大きく、十分な実装には至っていない。救急医療前提の既存ドクターカー運用モデルが、在宅医療の診療特性にどの程度適合するかについても、実践的検証は不十分である。

【目的】在宅ドクターカー導入を検討した過程において顕在化した論点を体系的に整理し、厚生労働省医政局・地域医療計画課の運用マニュアルの定義、及び導入地域における警視庁、所轄警察署との協議内容を踏まえ、在宅医療における実装上の留意点を明確化する事を目的とした。

【方法】導入検討過程では、法制度、運用体制、人的資源、財務、医療安全の5領域から論点を抽出した。併せて、警視庁、管轄警察署との協議を通じ、緊急自動車登録要件、必要書類、車両仕様および運用規程案を整理し、現行ドクターカー運用マニュアルとの整合性および在宅診療への適合性について検討を行った。

【結果】現行マニュアルが想定する恒常的かつ組織的な出動体制は、在宅医療における不定期かつ個別性の高い診療形態とは前提条件に乖離が認められた。特に、緊急走行の法的解釈、登録手続きの地域差、運用体制の整理、車両整備・維持に係る費用負担といった点が、導入検討における主要な論点として抽出された。

【結論】在宅医療におけるドクターカー活用を検討するにあたっては、救急医療モデルを前提とした既存運用との整合性や在宅診療特性への適合を踏まえた整理が重要である。
本検討は、在宅医療における医師の迅速到達手段の設計に関する基礎的知見を提供すると考えられる。