講演情報

[SY06-4]在宅診療クリニックの経営を導く戦略的広報:「地域にとろける医療」と政策・次世代医療への参画

髙瀬 義昌 (医療法人社団 至髙会 たかせクリニック)
1984年信州大学医学部卒業。麻酔科・小児科を経て、家族療法的視点を含む包括的医療を模索。2004年、東京都大田区に在宅医療を中心とする「たかせクリニック」を開設し、延べ約1,500名の在宅療養を支援してきた。現在は在宅患者約700名規模の診療を基盤に、認知症・高齢者精神疾患(処遇困難例を含む)への対応を中心に活動。認知症診療では、家族支援と薬物治療の最適化を両輪に、生活機能と安全の両立を重視する。多職種協働の現場づくりと後進育成にも力を入れ、地域包括ケアや介護連携の実装を推進。講演・研修を通じて、現場で使える意思決定支援とケアの標準化、連携体制の強化にも取り組む。厚生労働省事業や東京都・大田区の委員等として在宅医療の発展にも寄与。
2012年東京医科大学大学院修了、医学博士。一般社団法人日本デジタル医学会副代表としてデジタル技術の医療実装を推進。2024年4月に公益財団法人日米医学医療交流財団の会長に就任し、国際医療交流の推進に取り組む。2025年より東京医科大学地域医療指導教授、日本在宅医療連合学会評議員。
在宅医療において、経営の安定と質の高い医療提供、さらにケアの提案と多職種連携の両立は不可欠な両輪です。本演題では、在宅診療クリニックの実践知に基づき、「経営戦略としての広報」の重要性を提言いたします。
広報とは単なる宣伝ではなく、ステークホルダーとの信頼関係を構築・維持するためのマネジメント機能です。いわゆる困難事例に対し、患者・家族を包括的に支える「地域にとろける医療」を実現するためには、現場における多職種連携や「予防的キュア・ケア」の実践を、SNS等を通じて可視化することが有効です。
戦略の中核は、自院の独自性を明確に打ち出すことにあります。単なる訪問診療の提供にとどまらず、フットケアなど周辺事業との連携を含めた「訪問診療+α」の価値を可視化することで、地域課題の解決に資する「ソリューションビジネス」としての位置づけを確立することができます。これにより、集患のみならず、採用難の時代における人材確保やスタッフの定着率向上といった経営課題にも、直接的・間接的に寄与いたします。
さらに、戦略的広報の高度な展開として、学術・政策・国際交流への主体的な参画が挙げられます。制度設計や政策提言に関わる研究機関との連携や、デジタル医療領域における学術活動、国際的な医療交流への参画は、単なる外部活動にとどまりません。これらは医療機関としての専門性と社会的公信力を高める広報戦略の一環であり、未来の地域医療を見据えた組織としての姿勢を示す強力なメッセージとなります。
まだまだテクニカルな部分は日々学んでいる最中ですが、医療広告ガイドラインを遵守しつつ倫理的リスクマネジメントを徹底し、デジタルの力を活用して「現場の熱量」と「未来へのビジョン」を統合的に発信すること。こうした多角的な広報活動こそが、激動の時代において「選ばれるクリニック」として持続的に発展するための重要な経営戦略であると考えております。