講演情報

[SY09-7]AI時代前夜の在宅医療 ―説明を減らし相談を増やす「情報の処方」 患者・家族・医療者がともに成長する医療―

横山 太郎 (横山医院 在宅・緩和クリニック)
平成18年埼玉医科大学医学部卒業。平成21年埼玉医科大学国際医療センター腫瘍内科助教、平成23年横浜市立市民病院緩和ケア内科を経て、平成31年に医療法人社団翔会 横山医院 在宅・緩和クリニックを開院。在宅医療を軸に、抗がん剤治療中からの早期緩和ケア外来を実践している。医療者に限らない多職種による私設がん相談支援センターを整備し、医師の説明負担軽減と理解の均てん化を目的とした「医療補助動画」を制作・臨床応用している。一般社団法人CancerXの活動として、がん情報をキャンサージャーニーに沿ってキュレーションした「防がんMAP」を作成。神奈川県と協働し神奈川県版を展開し、県内がん拠点病院や県の広報紙を通じて配布を行っている。日本ユーザーリーダー協会「第11回若者力大賞」受賞。厚生労働科研費、文部科学省事業に参画。第26回日本死の臨床研究会関東甲信越支部大会大会長。2024年アジアベテランフェンシング選手権出場。
在宅医療の現場では、治療方針だけでなく、制度や生活上の注意点など多岐にわたる説明が求められている。病院外来と比べれば「これからどうするのか」を相談する時間は確保しやすいものの、決して十分とは言えず、限られた時間をいかに有効に使うかが課題である。この課題に対し、医師の説明を補助する「医療補助動画」を制作し、在宅医療の現場で活用している。本動画は、医療者とテレビCM制作にも携わるコミュニケーションデザイナーが協働し、医療者だけでは気づきにくい「伝え方」や、説明後に患者・家族がどのような行動を取るかという行動変容を意識して設計している点に特徴がある。単なる情報提示ではなく、「見た後に何が変わるか」を重視した構成とすることで、臨床現場で実際に意味を持つ動画となっている。医療補助動画を視聴してもらうことで、基本的な説明が省略でき、診察時には患者や家族の不安や価値観に即した「相談」に時間を充てることが可能となった。また、診察時に同席できなかった家族や、後から内容を復習したい患者・家族にとっても有用であり、情報共有と理解の均てん化に寄与している。さらに、神奈川県と協働して作成した、がん情報をキャンサージャーニーに沿ってキュレーションした「防がんMAP」と併用することで、患者や家族が玉石混交したインターネット上の情報で混乱しなくなり、患者・家族の意思決定を支える相乗効果を得ている。今後は、情報提供を医療者だけが担うのではなく、市民自身が担う体制の構築も視野に入れている。医療補助動画は、在宅医療の効率化と多職種連携の質向上を実現すると同時に、「情報は処方する時代」という新たな医療のあり方を具体化する実践的手法であり、その有用性を報告する。