講演情報

[SY11-2]異なる地域への多拠点展開から見えた在宅医療の本質 ~「生活を支える」普遍的ニーズの再認識~

内田 貞輔 (医療法人社団貞栄会 静岡ホームクリニック)
2007年:聖マリアンナ医科大学卒業。初期研修後、内科領域で経験を積む。
2012年:聖マリアンナ医科大学 内科学講座の助教に就任。専門医療と退院後支援のギャップを意識し、在宅医療への志向を強める。
2015年:静岡ホームクリニックを開院し院長に就任。24時間365日対応の在宅医療体制を構築。
2016年:医療法人社団貞栄会を設立し理事長に就任。2019年以降、東京・千葉、名古屋、神奈川へ拠点展開を進める。
医学博士
日本在宅医療連合学会 指導医
日本内科学会 総合内科専門医
日本リウマチ学会 指導医
日本プライマリ・ケア学会 指導医
日本緩和医療学会 認定医
【背景・目的】当法人は、静岡県で在宅医療専門クリニックを開業した後、東京都、千葉県、愛知県、神奈川県へと分院を展開し、異なる地域性を持つ複数のエリアで在宅医療を実践してきた。本報告では、地方都市から大都市圏にまたがる多拠点展開の経験を通じて見えてきた「在宅医療の本質」について考察する。
【実践と結果】 拠点展開を進める中で、地域ごとに患者や家族の特性、コミュニケーションの取り方には表面的な違いが存在することが確認された。静岡県においては患者や家族との間に初期からアットホームな関係性が築きやすい傾向があった。一方、東京都心部などでは、人間関係に入るまでに初期段階で心理的な壁(距離感)を感じることが多かった。 しかし、終末期や重症化する過程において、患者や家族が医療者に求めるものは、地域を問わず共通していることが明らかであった。人間として最期に向き合う「芯(深層)の部分」で求めているものは同じであった。
【考察】 この「芯の部分」の共通性は、在宅医療の本質を示唆している。患者や家族が真に求めているのは、単なる「病気の治療」ではなく、人生の最終段階における「不安の払拭」や「自分らしさの維持」である。 当法人が掲げる「医療は3割、生活が7割」という理念や、患者の人生に伴走し、不安に寄り添う姿勢は、一地方でのみ通用するものではなかった。患者の根源的なニーズに対してしっかりと関わることができれば、どのような地域であっても自分たちの在宅医療が通用し、受け入れられた。
【結論】 異なる地域での展開を通じて得られた最大の知見は、「患者の人生に寄り添う」という在宅医療の本質が地域性に左右されない普遍的なものであるという再認識である。今後も在宅医療の受け皿が不足する中、地域ごとの表面的な違いに柔軟に対応しつつ、普遍的な「安心」を提供する質の高い在宅医療モデルを広げていくことが求められる。