講演情報
[SY12-1]医師不足より先に介護が崩壊する--僻地在宅医療の現場から都市部の10年後を問う
八十川 武明 (医療法人社団同行会 うらかわエマオ診療所)
2002年 浜松医科大学医学部卒業、同附属病院第一内科研修医
2004年〜 聖隷三方原病院 腎臓内科
2011年〜 浦河赤十字病院 第4内科部長
2014年〜 坂の上ファミリークリニック 内科・訪問診療
2016年〜 浦河エマオ診療所 院長(現職)(2015年より浦河赤十字病院内科非常勤兼任)/日本内科学会総合内科専門医・日本腎臓学会腎臓専門医・認知症サポート医
2004年〜 聖隷三方原病院 腎臓内科
2011年〜 浦河赤十字病院 第4内科部長
2014年〜 坂の上ファミリークリニック 内科・訪問診療
2016年〜 浦河エマオ診療所 院長(現職)(2015年より浦河赤十字病院内科非常勤兼任)/日本内科学会総合内科専門医・日本腎臓学会腎臓専門医・認知症サポート医
浦河町(人口11,231人・高齢化率34.4%・2025年)が属する日高医療圏の人口10万対医師数は北海道平均の50%未満であり、全道で最も医師が少ない圏域の一つである。この地域格差は偶発的なものではなく、少子高齢化と地方からの人口流出が複合した構造的問題である。この高齢化率34%台は、札幌市が2035年前後に到達すると推計される水準と一致する。浦河は「僻地の特殊事例」ではなく、都市部が10〜15年後に直面する現実を先行して生きている。 うらかわエマオ診療所では内科・精神科常勤医各1名体制のもと、看護師・医師事務作業補助者への徹底したタスクシフトにより、訪問診療162名・年間看取り26件(うち在宅20件)の在宅医療を実現してきた。書類作成・訪問調整・入退院調整のすべてを事務職員が担うとともに、AI音声認識ツールにより訪問診療中の音声をSOAP形式で自動文字起こしし、医師の記録負担を軽減している。限られた人員でも、人的タスクシフトとICT活用の組み合わせが在宅医療継続を支える現実的かつ再現可能な手段となっている。 しかし現在、新規依頼の受入困難が生じはじめている。主因は医師の限界ではなく、ケアマネジャー・ヘルパーの枯渇である。ハローワーク浦河の有効求人倍率は1.8倍(北海道平均1.1倍)に達し、介護ベッド導入すらケアマネ不足で遅延する事態が生じている。在宅医療の持続可能性を脅かすのは「医師不足」より先に「介護崩壊」であるという認識が、今こそ医療・介護・行政で共有されるべきではないか。 ICTや地域コミュニティの見守り力を補完資源として活用する試みも始まっているが、根本的な問いは避けられない。医療提供者として「何を優先し、何を諦めるか」を正面から議論する時機に来ている。10〜15年後の都市部を先取りする僻地の現場から忌憚のない問題提起を行い、在宅医療の持続可能性を共に考えたい。
