講演情報

[SY12-3]山形県における僻地訪問診療の問題点と課題解決
~人口減少地域における在宅医療体制維持の可能性を模索する~

奥山 慎一郎 (訪問診療クリニックやまがた)
2000年 埼玉医科大学医学部卒業
2000年 埼玉医科大学総合医療センター研修医 2003年 NTT関東病院ペインクリニック科
2007年 埼玉県立がんセンター緩和ケア科
2013年 山形大学医学部附属病院 疼痛緩和診療部・痛緩和内科
2015年 山形県立河北病院 緩和ケア科・地域医療支援部部長
同年 山形県委託 山形県がん教育アドバイザー就任
2019年 訪問診療クリニックやまがた 院長
2021年 医療法人社団 侑眞 理事長
日本では地域包括ケアシステムの推進により在宅医療の整備が進み、患者が住み慣れた地域で療養することを支える体制が構築されてきている。一方で中山間地域や離島などの僻地では、人口減少や医療資源の不足により在宅医療の提供体制を維持することが困難となりつつある。山形県は中山間地域の割合が高く、高齢化率も全国平均を上回る地域であり、訪問診療を含む在宅医療の持続可能性は地域医療における重要な課題となっている。本発表では、山形県における僻地訪問診療の現状を踏まえ、その問題点と課題解決の方向性について考察する。 第一の課題は、人口減少と高齢化、さらに医師不足による在宅医療体制の脆弱化である。山形県では地域住民のみならず地域医療を担う医師の高齢化も進んでおり、とくに中山間地域では訪問診療を担う医療機関が限られている。その結果、一部の医療機関に訪問診療が集中し、24時間対応や緊急時対応の負担が増大している。こうした状況に対しては、医療圏単位で訪問診療を分担するネットワーク体制を構築し、在宅療養支援診療所を地域医療支援病院が後方支援する仕組みを整備することが重要と考えられる。 第二の課題は、地理的条件による訪問診療の効率低下である。山形県では患者宅までの移動距離が長く、冬季の積雪などの自然条件も加わることで訪問診療の時間的・人的負担が大きい。また僻地では訪問看護や介護資源の不足も在宅療養継続の障壁となっている。これに対してはICTを活用した多職種連携や情報共有の強化、オンライン診療の補助的活用などにより、移動負担を軽減しながら在宅医療を支える体制の整備が求められる。 僻地における在宅医療は地域住民の生活を支える基盤であり、医療機関のみならず医療・介護・行政が協働して地域全体で支える体制づくりが不可欠である。シンポジウムでは当地域の現状を共有し、同様の課題を抱える地域にとっての示唆となる議論をしたい。