講演情報
[SY12-4]複数医師の交代制勤務による持続可能なへき地在宅医療モデルの構築
永井 康徳 (医療法人ゆうの森たんぽぽクリニック)
僻地での国保診療所勤務後、愛媛県松山市で在宅医療専門のたんぽぽクリニックを医師1人、看護師1人、事務員2人で開業。現在は職員100人で情報の共有と方針の統一を図り、患者本位の多職種チームで患者を診ることを基本理念とする。平成22年には、市町村合併の余波で廃止となった人口約1200人の町の市立のへき地診療所を民営化運営し、そのへき地プロジェクトは平成28年に第1回日本サービス大賞地方創生大臣賞を受賞した。現在は松山市で約650人、西予市明浜町で約60人の在宅患者をマネジメントする。平成28年からは、在宅患者のための在宅療養支援病床「たんぽぽのおうち」を開設。「医療者の無知は患者にとって罪」という理念の元、たんぽぽ先生の在宅報酬算定マニュアル(日経BP社)等の書籍を発刊し、「全国在宅医療テスト」を主催し、複雑な在宅医療制度の全国への普及にも努めている。
へき地医療は従来、1人の医師が昼夜を問わず地域医療を背負う自己犠牲的モデルに依存してきた。しかし、この体制は医師の疲弊を招き、持続可能性に大きな課題を抱えている。我々は2012年、愛媛県西予市明浜町において年間3000万円の赤字で廃止が決まった国保俵津診療所の民間移譲を受け、「たんぽぽ俵津診療所」を開設した。人口約1100人の当該地域に持続可能な在宅医療体制を構築するため、松山市の本院に勤務する常勤医師のうち5名が曜日ごとに交代で診療所に通勤し、午前は外来、午後は訪問診療、夜間は隣接の医師官舎に宿泊して往診に対応する「交代制勤務」を導入した。当時の医療法では診療所に常駐医師の配置が義務付けられていたが、四国厚生支局との交渉により特例として認められ、後に1人の医師が2カ所の診療所勤務を兼務できるよう医療法改正にもつながった。さらに、毎朝のオンラインミーティングにより本院と診療所間の患者情報共有と診療の継続性を担保している。開設4カ月で黒字に転換し、地域住民の回帰とともに民間デイサービスや有料老人ホーム等の進出を促し、地域経済の活性化にも貢献した。2016年には第1回日本サービス大賞地方創生大臣賞を受賞した。本シンポジウムでは、12年間の実践を通じて得られた知見をもとに、交代制勤務による医師の負担軽減、教育研修システムを通じたへき地医療人材の育成、そしてこのモデルの全国展開の可能性について報告する。
