講演情報

[SY14-3]在宅療養の現場における看護師特定行為の活用と効果

神野 千佳子 (香住ヶ丘リハビリ訪問看護ステーション)
2016年、病床数350床の二次救急指定病院に入職し、外科病棟に勤務。急性期医療の現場において、周術期管理から全身管理を含む看護実践を経験する。
2018年より香住ヶ丘リハビリ訪問看護ステーションに入職し、在宅医療分野に従事。在宅療養の現場において、定期的かつ継続的な医療的介入を必要としながらも受診が困難な利用者や、不安を抱えながら病院から在宅へと生活の場を移行する利用者が多く存在することを課題として捉え、在宅医療における医療提供体制の充実を目的に、2024年度に特定行為研修を修了した。
現在は、2025年度より医師の包括的指示のもと定められた手順書に沿って、訪問看護の現場において特定行為を実践している。
特定行為とは、医師の包括的指示のもと、看護師が定められた手順書に沿って一定の医行為を実施する制度であり、医療の安全性を確保しつつ、現場での迅速な対応を可能とする仕組みである。2015年の制度開始以降、急性期医療分野を中心に導入が進められてきた。
在宅領域では、第8次医療計画において、在宅医療の需要増に対応する方策として、特定行為研修修了看護師の養成や多職種連携、タスク・シフトの推進が位置づけられている。限られた医療資源で在宅療養を支えるため、効率的かつ継続的な支援体制の構築が求められている。
在宅では、医師の訪問や指示を待つことで対応に時間を要する場面もあり、患者や家族に不安や負担が生じることがある。こうした課題に対応するため、特定行為を活用した支援体制の構築は、患者・家族にとって安心感を高め、在宅療養の質の向上につながると考えられる。
しかし、厚生労働省「特定行為研修制度の推進について」によると、令和4年度時点で全国の訪問看護ステーションに就業中の特定行為研修修了者は375人で、全体の5.7%にとどまっており、在宅医療分野での活用は十分に進んでいるとは言い難い。福岡県内・市内においても、在宅医療領域での特定行為研修修了看護師は一定数存在するものの、継続的な実践事例は限られている。
当訪問看護ステーションでは2025年度より、2区分2行為の特定行為を実施してきた。特定行為の実践により、患者・家族の安心感の向上や、タスク・シフトを通じた日常の看護ケアの質の向上がみられた。また、状態変化への迅速な対応により、医師の臨時訪問や緊急対応の軽減につながった事例も認められた。在宅医療における特定行為の活用は、医療の質と効率性を両立させる手段として、今後のさらなる活用拡大が期待される。本報告では、当ステーションにおける1年間の特定行為の取り組みとその効果、今後の課題について報告する。