講演情報

[SY17-1]在宅医療における医療安全・患者安全の現状と展望

荒神 裕之1,2 (1.山梨大学大学院総合研究部医学域医療安全学講座, 2.全国土木建築国民健康保険組合 総合病院 厚生中央病院 医療安全管理室)
2000年 琉球大学医学部医学科卒業
2008年 早稲田大学大学院法務研究科修了(法務博士(専門職))
2018年 東京医科大学大学院公衆衛生学分野博士課程修了(博士(医学)
2019年 山梨大学医学部附属病院 医療の質・安全管理部 特任教授
2024年 山梨大学大学院総合研究部医学域 医療安全学講座 教授
医療安全(患者安全)は、患者に生じうる危害を最小化するために、医療提供のシステム全体を改善していく概念として発展してきた。Charles Vincentらは、患者安全が病院内の医療行為に限定されるものではなく、Patient Journey(患者の経過全体)を通じて捉えるべき概念であることを示した。在宅医療は、病院の延長線上にない異なる解決策が求められる医療提供の場であり、薬剤管理、情報共有、急変対応などの安全課題が、医療者のみならず患者・家族の関与や生活環境に大きく依存する点が特徴であるとされる。日本においても、在宅医療や診療所といった小規模医療機関における医療安全・患者安全に関する研究が徐々に蓄積されている。長谷川友紀らの厚生労働科学研究では、診療所が在宅診療の主要な提供主体であることを踏まえ、外来および訪問診療における医療安全対策の実態が検討されており、訪問診療では情報共有の強化やケア移行時の手順見直しが優先課題であることが示唆された。また、青木 拓也らの全国調査では、診療所における患者安全管理体制とインシデントの実態が示され、小規模医療機関における安全活動の可視化の難しさが明らかにされている。訪問看護領域では、柏木 聖代らの研究により、事故の定義や範囲の整理、全国調査による実態把握、再発防止策の検討が進められてきた。さらに、介護領域を含む在宅ケア全体の安全については、種田 憲一郎を研究代表者とする厚生労働科学研究において、事故報告が学習や再発防止に十分結びついていない現状や、医療と介護の制度差による課題が指摘されている。こうした研究の蓄積と並行して、「訪問看護における医療安全に関する研修教材作成事業」も進められている。本発表では、これらの先行研究で示された成果と政策動向を整理し、在宅医療における医療安全・患者安全を研究・教育・実践へとつなげる今後の方向性について検討する。