講演情報

[WS06-2]多職種と共に家族と本人の物語をつなぎ 暮らしを整える栄養ケアー多職種の情報を統合し潜在的なリスクを可視化し、アセスメントに活かすICTの活用ー

椎名 美貴1,3, 岩本 ゆり2 (1.北陸先端科学技術大学院大学, 2.医療法人社団悠翔会 看護事業部, 3.株式会社学研ココファンナーシング横浜)
在宅看護に関わり10年目になります。
昨今は慢性期・終末期のみではなく急性期や治療中の患者さんに対しての在宅看護・医療ニーズも増加しています。デジタル機器、AIの発展が離島へき地への医療提供の可能性を広げ、在宅医療の選択肢が広がりました。私自身も急性期の在宅医療・遠隔モニタリングに取組つつ、看護師として多くの方の暮らしや看取りに関わり、日々の言語化できない直観・熟練したケアの知識構造化やIoTイノベーションを学ぶために研究活動も行っています。

略歴:
 2014年から2019年 東京、神奈川、愛知県内で訪問看護ステーション勤務
 2020年 新型コロナウイルス地域療養モデル(遠隔看護)
 2022年 医療法人社団悠翔会在宅クリニック同行看護師、訪問看護師
   公認心理師取得、プライマリケア認定看護師取得
 2025年 北陸先端科学技術大学院大学 博士前期課程・西村拓一研究室所属
2026年 学研ココファンナーシング横浜 訪問看護師
はじめに
在宅療養者や要介護高齢者における低栄養や摂食嚥下障害は頻発するが、「年相応」「嗜好の問題」として見過ごされやすく、介入が遅れることも多い。特に在宅では、食事・排泄・内服・活動量・口腔ケアなど生活全体が複雑に影響し合うため、多職種による継続的かつ統合的な評価が不可欠である。ICTを活用した情報共有とコミュニケーションを基盤に、本人の生活史と意向を中心に据えた在宅栄養ケアの実践を症例から検討する。

症例
70歳代、食道がん・胃がん術後に腸瘻造設となり自宅療養を再開した利用者。入院中の嚥下検査により経口摂取不可と評価され、経腸栄養管理となる。退院後に訪問看護から本人と妻に経管栄養の指導を行い、介護職とも協力しながら自立して行えるまでになった。自宅療養中に誤嚥性肺炎となり入院は回避されたが、ADLが低下し、排便の不調や口腔ケア不足が明らかとなった。栄養支援評価ICTツールや医療介護専用コミュニケーションツールを用い、他職種が情報を共有し、排便記録の統一、腸内細菌叢の改善、栄養量調整を実施した。その結果、肺炎再発なく、活動量の向上の訪問リハビリも導入できるようになった。継続的なモニタリングが運動量の増加による体重減少を早期に把握し、栄養介入につながった。状態の安定は本人の意欲にもつながり「桜を見に行きたい」という本人の意向がチームの共通目標となった。

考察
在宅栄養ケアでは、症状が顕在化してからの介入では回復が困難であり、日常の小さな変化を多職種で共有する仕組みが重要である。ICTは情報の連続性と可視化を支え、本人・家族の想いを統合する有効な手段となる一方、運用負担や本人と家族の参画の難しさといった課題も残る。本症例を通じ、ICT導入は情報統合に必要なコミュニケーションを促し、専門性をつなぎ「暮らしを整える栄養ケア」を実現する可能性を参加者と共に考えたい。