セッション詳細

モデルの違いを乗り越える:立場の異なる人と協働するために

2026年9月2日(水) 16:10 〜 18:10
2階 OS会場5(BNC209)
オーガナイザー:青山 征彦(成城大学)、小橋 康章(無所属の非職業的研究者)
概要:
 専門家同士、素人と専門家のコミュニケーションがうまくいかない場面に注目して、どのようにモデルの違いを乗り越えられるかを議論したい。(自称を含め)素人/非専門家の参加を歓迎する。また専門家性の欠陥を乗り越えたい(自称を含め)専門家も歓迎である。
 認知科学のコミュニティにおいては「人間の知能」と「人工の知能」が互いにモデルとなり相互作用を繰り返してきた歴史がある。例えば人間の認知過程を考えるときに、ある合理的な行動や判断のモデル(例 パーセプトロン、状況モデル)を想定して、そのモデルが実際の認知過程をどれくらい反映しているかを検討するという手法も広く用いられてきた。また、研究を進める上で、人間のありかたに関する一種の仮定(例 経済的人間)をおいたり、何らかの枠組み(例 情報処理アプローチ、社会文化的アプローチ)を前提としたりすることはさまざまなアプローチで見られる。これもまた、人間の在り方に関するモデルと言えるだろう。本OSでは、認知科学の研究にそうしたモデルが果たす機能や意味について議論するとともに、近年の生成AIの急速な発展や、SNSのようなインターネット上のつながりを前提に、各種のモデルが専門間の、また市民や一般社会との橋渡しや協働を実現していく具体的な方法を考えたい。

話題提供1
嚙み合わないモデルの話:いかにして橋は架けられるか
小橋康章(無所属の非職業的研究者)・青山征彦(成城大学 社会イノベーション学部)

モデルの違いについて議論するための導入として、青山が聞き手となり、小橋が体験した医療場面の事例を紹介する。この事例をもとに、専門家と患者がもつ「モデル」の嚙み合わなさを概念プロファイルとして捉え直す。異なるモデルを素材・目的・形式度・関係性の四軸で多次元的に表現し、モデルの差異を整理し接続する通訳機能を考えてみたい。個人的経験をモデルとして再構成することで、専門家と非専門家の協働的対話の基盤を探る。

話題提供2
専門知と日常知のモデルをつなぐ:叡智としてのリスクリテラシー
楠見孝(京都大学 国際高等教育院)

本話題提供では、食品リスクを題材に,専門家の科学知モデルと市民の日常知モデルのずれを検討する。専門家はリスクを「確率×影響の大きさ」として捉えるのに対し,市民は生活文脈の中で,ハザードの有無,不安-未知性イメージ,制御可能性に基づいて判断しやすい。ハザードとリスクの混同,感情ヒューリスティック,ゼロリスク志向を手がかりに,批判的思考とメタファを通じて両モデルを調和させるリスクリテラシーの可能性を論じる。

話題提供3
80億のモデルはいかに共存するか:フローインテリジェンスの解明に向けて
森田純哉(静岡大学 情報学部)

人はそれぞれ異なる経験と視点に基づくモデルをもち、同じ対象から異なる事実を構成する。本発表では、教育者と学習者の視点差、異なる視点による協同問題解決、タングラムを用いた共通基盤形成の研究を振り返る。さらに、AIがモデル間の摩擦を緩和する可能性と、局所的なエコーチェンバーを強める危険を論じる。異なるモデルを一つに統合するのではなく、差異を保ちながら相互作用の流れを調整する知性を「フローインテリジェンス」として提案する。

全体討論
齋藤五大(東北福祉大学 総合福祉学部)・青山征彦(成城大学 社会イノベーション学部)