講演情報

[11003-07-02]緩和ケア病棟で看取りを希望していたが一般病棟で看取りとなった一症例
       ~一般病棟における緩和的介入~

*安部 優子1、小嶋 秀治1、小林 徹1、村上 雅和1 (1. 水海道さくら病院)

キーワード:

緩和ケア、看取り、一般病棟

背景:終末期医療における看取りの場所は患者・家族にとって最後の時期をどのように過ごすかを左右する重要な要素である。緩和ケア病棟は「安らかな最期」の場として選ばれることが多いが、希望通りにいかないことも少なくない。その際、一般病棟でどのように緩和ケア的アプローチを行い患者と家族に寄り添った看取りを実現するかが課題となる。今回、緩和ケア病棟での看取りを希望していた患者・家族が一般病棟で看取りとなった症例を経験したので報告する。

症例:80歳代、膵がん終末期 男性。患者も家族も緩和ケア病棟での看取りを強く希望していた。しかし呼吸困難と酸素化が悪化し一般病棟に入院となった。

経過:入院後急激に酸素化が不良となり呼吸困難が増悪し、非侵襲的陽圧呼吸(NPPV)が装着となった為緩和ケアを有する病院への転院は不可能となった。終末期ではあったが、治療と症状コントロールのバランスを重視しつつ、患者、家族の希望を丁寧に確認し、納得のいく治療と症状緩和を行った。又、治療の中止やケア方法、家族や本人の希望、看取りに時期について繰り返し話し合い、家族の面会時間の緩和や家族、本人の心理的支援にも配慮した。結果的に一般病棟での看取りとなったが家族は「ここで最期を過ごせてよかった」と述べ看取りに満足をした。

考察:一般病棟での看取りの場合でも、医師が丁寧な病状説明を行い、患者、家族の納得のいく治療と症状コントロールを提供し、スタッフが患者の希望に沿ったケアを実施することで満足度の高い看取りを行えることが示唆された。看取りの質は病棟の種別ではなく、症状緩和の適切さと家族支援、医療者の姿勢とコミュニケーションに左右されると考えられる。

結語:本症例は一般病棟における緩和ケア的アプローチの重要性を示すものである。今後は、一般病棟における終末期ケア体制のさらなる整備と、多職種連携による緩和的介入の質の向上が求められる。