講演情報
[11003-07-04]コミュニティドクターフェローシッププログラムの実践コミュニティ理論による教育効果の検証
*漆畑 宗介1、密山 要用2 (1. JA秋田厚生連 湖東厚生病院、2. 総合在宅医療クリニック)
キーワード:
地域志向のプライマリ・ケア、実践コミュニティ、医学教育
背景・目的 後期研修を修了した医師に対し、地域志向のプライマリ・ケアを継続的に深化させる実践的な学習機会の提供は重要な課題である。我々は、実践コミュニティ(Community of Practice: CoP)理論に基づき、教育プログラム「コミュニティドクターフェローシッププログラム(コミドク)」を開発し、その効果と有用性を検証した。方法 毎年1〜3名の医師を対象に、1年間の教育プログラムを実施した。プログラムは、地域での実践活動と、月1回の集合研修、そして振り返りを組み合わせた構成とした。この構造により、学習者が自身のコミュニティで直面した課題をコミドクという実践コミュニティに持ち込み、学習者同士の対話を通じた相互学習を促進した。結果 プログラム終了時に実施したアンケートから、プログラムの良かった点として同じ立場で悩みを相談できる仲間や対話の場の存在があげられた。また「個人としての自分と医師としての自分が混ざり合う時間だった」「一人称で地域活動を言語化することができた」といった意見も聞かれた。考察 本プログラムは、学習者が自身のコミュニティで感じた課題を、コミドクという実践コミュニティで共有する「二重編み組織」の側面を持っていた。また、自己の実践を実践コミュニティ内で言語化し、他者との「意味の交渉」を行うプロセスが、知識の獲得と家庭医療専門医としての専門的アイデンティティ形成に大きく寄与したと考えられる。実践コミュニティ理論に基づく本教育モデルは、家庭医療専門医の専門性向上に有効なアプローチであることが示唆された。結論 コミュニティドクターフェローシッププログラムは、後期研修修了後の医師に対し、実践的な知と地域に根差した専門的アイデンティティを涵養するための、有用な継続学習の機会である。
