講演情報

[11003-07-06]診療所におけるLGBTQ+フレンドリー化に向けた包括的取り組みの実践報告

*山本 結1、清田 実穂1  (1. 川崎医療生活協同組合あさお診療所)

キーワード:

SDH、性的マイノリティ

当院は地域の家庭医療診療所として、患者の多様性に配慮した医療提供の重要性を認識していたが、性的マイノリティに関する明確な取り組みは限定的であった。医療機関で不適切な対応を受けやすいこと、受診回避につながる環境要因が多いことを踏まえ、2024年度より診療所全体でLGBTQ+当事者が安心して受診できる環境整備を目指し、段階的なプロジェクトを開始した。本プロジェクトでは、①受診しやすい環境整備、②スタッフ教育、③情報発信の改善、④当事者参加と評価の4領域で取り組みを進めた。 環境整備として、院内にレインボーフラッグを設置し、4つのトイレのうち3つを「だれでもトイレ」に変更した。また、性別欄を自由記載に変更するなど多様性への配慮を意識した初診問診票を導入した。スタッフ教育として、当事者を招いた研修会を開催し、その前後で日本語版LGBT-DOCSSを実施してスタッフの苦手領域を可視化した。さらに、その後の定期学習会も設定し、継続的な知識共有の体制を整えた。加えて、常勤医師2名(診療所所長・筆者)がノバルティスファーマのWEBサイトで受講可能な『LGBTQ+と医療に関するe-ラーニング』を修了し、同WEBサイト内のALLY表明医師マップに登録した。情報発信の改善として、診療所ホームページを全面改訂し、ALLY表明や受診時の配慮事項を明示した。院内には取り組み内容を紹介するポスターを掲示し、患者へわかりやすく提示した。当事者参加と評価については、当事者から継続的なフィードバックを得るため、WEBご意見フォームを設置し、院内に掲示したポスター内のQRコードおよびホームページ内のリンクから回答可能とする体制を整えた。 これらの取り組みにより、スタッフの理解が深まり、当事者が受診しやすい環境が徐々に整備されつつある。今後は評価と改善のサイクルを継続し、地域に根ざした包括的ケアの実現を目指す。