講演情報

[12001-08-01]海外製のアミノ酸キレート鉄含有サプリメント内服により鉄過剰症を来した一例

*田渕 司1、石田 岳史1、大内 修司1、篠原 孝宏1、市毛 博之1、馬渕 卓1、山田 徹1、木村 琢磨1、橋本 正良1 (1. 東京科学大学病院総合診療科)

キーワード:

アミノ酸キレート鉄による二次性鉄過剰症

【背景】
近年、海外製サプリメントをインターネット通信販売で個人購入する例が増えている。海外製の商品は、品質・有効性・安全性が国内の基準から外れるものもある。また、商品の表示や説明が日本語でない場合も多く、成分や副作用などを十分に理解できないまま購入してしまうこともある。アミノ酸キレート鉄は国内での製造販売が禁止されているが、個人輸入が可能なサプリメントである。アミノ酸キレート鉄の腸管における吸収経路は、酸化鉄、二価鉄、ヘム鉄とは異なっており、腸管で過剰に吸収されることで鉄過剰症を来すリスクがある。

【症例】
38歳女性。易疲労感、全身倦怠感の精査目的に近医を受診した。血液検査でフェリチン、TSATともに高値を呈したため、精査加療目的に当院を紹介受診した。特記すべき既往歴はなく、血液検査において炎症マーカーは正常で、膠原病や悪性腫瘍を示唆する所見は認めなかった。オンラインストアで購入した海外製のアミノ酸キレート鉄のサプリメントを約1年間にわたり服用していたため、サプリメントによる二次性鉄過剰症が鑑別に挙げられた。サプリメントの服用を中止したところ、易疲労感と全身倦怠感は消失し、フェリチン値は徐々に低下傾向を示した。

【考察】
フェリチン高値を認めた際には、内服薬や漢方薬の服用歴、家族歴だけでなく、サプリメント摂取の有無も聴取することが必要である。一般的に、経口鉄剤で二次性鉄過剰を呈することは非常に稀とされているが、アミノ酸キレート鉄は鉄過剰症を来す潜在的リスクがある。今後、海外製のサプリメントの個人輸入に伴う健康被害が問題になるケースは増加すると予想される。プライマリ・ケア医はその危険性を十分に認識しておくべきである。