講演情報

[12001-08-08]前立腺癌末期で急激な病状悪化があった患者に対し、多職種連携により自宅退院につなぐことのできた一例

*新海 英世1、吉田 絵理子1、石井 愛1、宮本 好美1、和田 浄史1 (1. 川崎医療生活協同組合 川崎協同病院)

キーワード:

終末期医療

【背景】
日本は高齢化率が29.1%の超高齢社会である。最期を迎える場所として自宅を希望する人は多く、在宅での看取りの体制作りが社会的な課題となっている。現状としては病院死がいまだ最も多いが、施設や在宅で亡くなる人も徐々に増えている。今回、終末期の前立腺癌患者が頚椎損傷後に急速な病状悪化を来したものの、多職種連携により短期間で在宅での看取りを実現できた症例を経験したので報告する。
【症例】90歳台、男性、前立腺癌にて外来治療中、頚椎損傷後にて入院した。入院後、前立腺癌が急性増悪し全身状態が不良となった。患者・家族は入院時から自宅への退院を希望されていたが、急激な病状悪化に伴い帰宅が困難となる可能性が高いと判断し、医師・看護師・リハビリスタッフ・医療ソーシャルワーカーらからなる多職種チームを編成した。地域包括支援センターや訪問診療医と連携を行い、医療機器準備、在宅介護サービス調整を1日で実施し自宅退院とした。患者は家族と共に自宅で穏やかな最期を迎え、退院3日後に亡くなった。
【考察】
在宅看取りの実現には、患者・家族の意思確認、多職種連携、地域連携体制の成熟が不可欠である。近年、在宅での看取り件数は全国的に増加傾向にあり、各地で24時間対応の在宅ケア体制・連携強化が進行している。本症例においては、在宅医療・看護・介護を含めた多職種間で情報を速やかに共有し役割分担を明確にしたことで、1日での在宅移行が可能となった。本症例を通して、急変した際にも、多職種の迅速な意思決定・連携や、病院から地域・在宅への円滑な橋渡し体制の構築があれば、患者の希望を実現できることを学んだ。