講演情報

[12009-15-03]在宅胃瘻管理中に発症したBall-valve症候群の一例

*久田 和佳1、永藤 瑞穂1、山本 由布3、太田 春彦2、舛本 祥一3 (1. つくばセントラル病院 総合診療科、2. つくばセントラル病院 腎臓内科、3. 筑波大学医学医療系 地域総合診療医学講座)

キーワード:

Ball-valve syndrome(BVS)、在宅診療

【背景】胃瘻栄養は長期経管栄養の確立された手技であり、胃瘻栄養に関する合併症発生率は全体で約9〜17%とされる。バルーン・チューブ型カテーテルの先端バルーンの幽門側移動により胃出口閉塞を来すBall-valve syndrome(BVS)は稀な合併症であり、発生率を示した研究はない。今回、在宅療養中に発症したBVSを早期に診断し、シャフト長短縮で再発を防止できた症例を経験したため報告する。
【症例】X-6年に多系統萎縮症と診断された65歳女性。X-2年に嚥下障害進行により胃瘻を造設した。その後訪問診療導入し、バルーン・チューブ型カテーテル20Fr(シャフト長35mm)を月1回交換していた。X年6月に腹部膨満と心窩部痛が出現した。緊急往診した際、カテーテルへの水分注入に抵抗はなかったが、排ガス・排液は不能であった。心窩部に弾性腫瘤を触知し、バルーンの位置異常を疑い、抜去・再留置し軽快した。しかし、2日後に症状再燃したため救急外来に搬送し、CTで幽門部へのバルーン陥入を確認した。応急的に1cm牽引・胃瘻のボタンと皮膚の間に化粧用のパフを挿入し、胃内のシャフトが1㎝程度短くなるように位置調整したが、1ヵ月後再発した。最終的にシャフト長を30mmへ変更し、その後は再発を認めなかった。
【考察】BVSはバルーン過膨張や固定不良、シャフト過長が原因とされ、重篤化すると潰瘍や出血に進展することもある。症状出現時にBVSを鑑別に挙げ、注入中止・減圧・再固定などを迅速に行うことで重篤化を防げる。本例では在宅での対応に難渋したが、CT撮影による画像評価を行うことで、早期の診断・適切な対応に繋がった。在宅医療ではバルーン・チューブ型胃瘻の患者が比較的多いため、BVSを胃瘻の合併症として認識しておく必要がある。また、シャフト過長が疑われる場合は、シャフト長の短縮を試みることで、BVSの再発防止に繋がる。