講演情報

[12009-15-04]心腎連関病態患者に対して、薬栄連携により多角的な指導を行った一例

*岡部 絢一1、小笠原 菜奈1 (1. なの花薬局昭島駅前店)

キーワード:

薬栄連携、かかりつけ薬剤師、心腎連関

【背景】心腎連関の病態を示す患者は、血圧、栄養、他臓器への影響、不安など、ケアすべき項目は多岐に渡る。本症例では、かかりつけ薬剤師と管理栄養士(以下、栄養士)の連携による多角的なケアを行い、治療アドヒアランスの向上に繋がった。
【症例】60代後半男性、陳旧性心筋梗塞、慢性心不全(ステージC)、CKD(G4)等の病歴あり。非専門医のもとで治療を行っていたが、食事療法には無関心であり、検査値にも無頓着であった。透析への不安から、栄養相談を開始し、食生活の改善提案等を行った。栄養士の勧めでかかりつけ薬剤師契約をし、セルフケア状況、指導内容、患者の性格やモチベーションなどを栄養士と共有し、ケアの方向性を合わせて以下の指導を行った。①検査伝票の持参を促し、栄養士の指導内容を共有して、食事療法と薬物療法の必要性を疾患や予後と結び付けて指導した。②服用薬の変更や貧血に対する加療などの処方提案を行った。③不安の聞き取りや行動変容の賞賛、専門医への受診勧奨を行った。④血液透析開始後の水分や電解質管理について指導し、透析中の体調や副作用の確認を行った。介入の結果、塩分量や飲酒量が大幅に改善し、体重測定などのセルフケア行動や検査伝票の持参が習慣化するなど、治療意識の改善が見られた。eGFR低下速度は介入前に比べて緩徐になり、減薬や貧血の再検査にも繋がり、心不全増悪も見られていない。専門医に転院後、透析開始となったが、食事と服薬による予後改善のために介入を継続し、副作用等なく治療を行えている。
【考察】本症例では、栄養士と情報を共有する事で薬剤師による指導の幅が広がり、継続的なケアによって、患者の理解や信頼が得られ、治療意識改善に繋がったと考えられる。各職種が連携し、互いの能力を発揮することで、心腎連関病態のような長期管理が必要な疾患に対して、予後改善効果を高めることが期待できる。