講演情報
[12009-15-06]Biographical flowの再構築が未分化健康問題を持つ独居高齢者の回復支援に寄与した一例
*曽根 久智1、菊池 徹哉1、佐野 康太1、藤沼 康樹1 (1. 生協浮間診療所)
キーワード:
未分化健康問題、Biographical flow(生活史の連続性)、複雑困難事例
【背景】Biography(生活史)とは人生の物語・日常生活を意味する。同一疾患でも病い体験は異なり、生活史が混乱する人もいれば連続性を保つ人もいる。Reeveら(2016)は、Biographical flow(生活史の連続性)を維持・再構築するには「Partnership」、「Meaningful anchors」、「Make sense」、「Demands on health/daily living」の4要素のバランスが必要と述べている。未分化健康問題を抱えた患者と共にこれら4要素に取り組み、日常生活が安定化したため報告する。【症例】独居の85歳女性。4年前にパーキンソン病と診断された。その後、下肢の痺れや動悸等の「発作」が出現し、救急車を頻回コールするようになり、1年前から訪問看護が導入された。発作時にL-dopaを乱用し、高次医療機関で入院精査・薬剤調整を受けた。地域包括ケア病棟を経て自宅退院となり、訪問診療が開始された。退院後1ヶ月半はケアマネージャーや訪問看護師に毎日電話をかけていた。多職種カンファレンスで「つながり」が本人の支えとなることを共通認識とした。定期訪問診療で薬剤調整を行いながら、本人の語りから「11歳の猫のお世話」「毎朝の散歩」「友人との電話や食事」が支えとなっていることを確認した。退院4ヶ月後には関係者から電話で様子を確認する程度となった。本人は「発作は朝6時の薬を飲めば治ることがわかり、朝の散歩ができればその日は大丈夫と思える。救急車を呼んでも状況は変わらないし、猫のために家で生活を続けたい」と語った。【考察】未分化健康問題を呈する患者では、生物医学的アプローチと並行してBiographical flow(生活史の連続性)をアセスメントし、4要素を意識した再構築の援助が、病い体験を日常生活に統合するために有効であった。
