講演情報

[12009-15-07]患者・家族・医療者の協働により納得のいく治療方針を得ることができた一例

*山田 衛1、由井 和也2、小林 和之2、矢藤 有悟3、伊藤 泰斗2 (1. 佐久総合病院、2. 佐久総合病院 小海分院、3. 川上村診療所)

キーワード:

意向の尊重、多職種連携

【背景】治療方針において患者の希望と医師の考えが合致せずに難渋することは多々ある。これまで医療との関係が希薄な高齢者が重症化を契機に自身の治療方針に向き合う際には、様々な方面から対応を検討する必要がある。【症例】職業ドライバーとして就労。既往歴はアルコール利用障害での入院歴とCOPD。前日に他院にて肺炎の診断で入院が必要とされたが拒否し抗菌薬の内服も拒否していた。翌朝、自家用車を運転して帰宅し、その後自車内で動けなくなっている様子を家族に発見されたが救急搬送は拒否し家族に連れられ当院を受診した。来院時SpO2:62%、呼吸数34回/分で、高度の気腫肺と大葉性肺炎像を認める重症肺炎であることを説明し、一般病棟での肺炎管理は同意され入院した。状態悪化時の人工呼吸器管理は同意されなかった。入院後にCO₂ナルコーシスとなり意識障害を来した。現行治療での回復は困難と家族へ説明したところ、気管挿管を希望する家族の意見もみられたが、最終的には本人の意向を最優先にしてほしいとの結論に至った。その後高流量鼻カニュラ酸素療法を新規に導入するなどの治療により状態は徐々に改善したが、室内気下で安静時SpO2:82%程度に留まった。在宅酸素導入を提案したが拒否された。退院前に家族・多職種間で必要なサービスについて協議を行ったが本人は導入を拒否した。そこで、居住地域の診療所と連携し、訪問看護の導入については同意を得た上で在宅酸素なしで入院6か月目に退院とした。その後は退院時に提案したサービスを適宜導入しながら自宅生活を続けることができている。【考察】本人の意向に基づきながらも実施できる範囲の医療介入を検討することは、退院後の生活まで見据えて治療方針を検討する際に重要である。最終的に地域との連携も図ったことで治療継続と本人の満足に繋がったことから「意向の尊重」を重ねていくことの意義を学べた。