講演情報
[CC-1]デジタル技術を顎欠損に応用した症例
*新保 秀仁1、*原田 直彦2 (1. 鶴見大学歯学部口腔リハビリテーション補綴学講座、2. 鶴見大学歯学部附属病院歯科技工研修科)
キーワード:
顎欠損、CAD/CAM、口腔内スキャナー
上顎悪性腫瘍の切除により生じた顎欠損に対して,発語や嚥下機能の早期回復を目的とした遊離皮弁などによる再建が行われる.しかし,再建された粘膜は弾性に富み,その後の顎義歯製作に際して,印象時の圧を排除することが困難であり,装着される顎義歯の安定性を大きく阻害する.そこで,本症例では口腔内スキャナーを用いて完全無圧印象により製作した顎義歯を供覧する.患者は34歳の男性.2021年5月に右側上顎癌と診断され,右側上顎骨全摘術および皮弁による再建術を施行した.2022年8月本学に紹介来院し,審美性の回復を中心に顎義歯の製作を希望した.上顎は歯牙部分欠損と口蓋には正中を超えた顎骨欠損を認めた.皮弁による再建部位は弾性が大きく,支持組織として不十分であったため,通法に従い,可及的な無圧状態でレジン床義歯を製作したものの,患者の満足を得ることができなかった.そこで,皮弁再建部の弾性に配慮したCAD/CAM顎義歯を製作することとした.IOSによる印象採得および咬合採得を行った.得られたサーフェイスデータよりCAD上でフレームワークをデザインし,SLMにて造形した.さらにフレームワークを3Dプリンティング樹脂模型に装着した状態のスキャンデータより,人工歯および義歯床をミリング加工し,樹脂模型上で常温重合レジンにて一体化した.完成義歯の義歯床内面は皮弁再建部粘膜の影響をうけることなく,安定を認めた.症例の状態を鑑みたIOSの応用とデジタル技術を利用することにより患者が希望する顎義歯の製作を可能にし,QOLに大きく寄与したと考えられた.