講演情報

[CPGC-1]咀嚼障害診断のための包括的な診断樹作成に向けて

*覺道 昌樹1 (1. 大阪歯科大学 有歯補綴咬合学講座)
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キーワード:

咀嚼、咀嚼障害、咀嚼機能低下

補綴歯科治療の主な目的のひとつは咀嚼機能の回復とその維持である。本セミナーでは食物の口腔内への取り込み、かみ砕くことによる表面積の増加、内容物の抽出、唾液との混和、食塊形成といった過程を咀嚼として定義している。長年にわたり咀嚼能力、咬合力、咀嚼筋活動、咀嚼運動などの分析による基礎研究が報告され、診断法として臨床応用が進められてきたが、歯科領域では咀嚼障害を病名として用いることは現状できない。一方、医科領域では咀嚼障害を病態のひとつとして認識しており、その多くは開口障害や摂食嚥下障害の中に含まれて報告され、独立した問題として定義されていないのが現状である。
 診療ガイドライン委員会の取り組みとして、咀嚼障害の病態とその診断指針を歯科領域から発信することを最終的な目的として、まずは発生器官および原因別の体系化を目指している。
 そこで、2010年~2024年の期間に報告された学術論文と医科領域の成書を含めて咀嚼障害に関する因子の調査したところ、咀嚼機能低下は歯の喪失、咬合接触面積や咬合力が直接的な原因として多く挙げられており、う蝕罹患歯の放置、歯周病の進行に関する報告が散見された。全身疾患では筋萎縮性側索硬化症や球麻痺に代表される神経・筋疾患、耳鼻咽頭領域の炎症性疾患、腫瘍性疾患、顎骨疾患などがあった。本セミナーではこれまでの取り組みの現状報告を行い、医科歯科が共通認識し活用できる咀嚼障害診断のための包括的な診断樹作成の足掛かりとしたい。