講演情報

[DSPC-1]高度顎堤吸収患者に対する下顎総義歯の仮床製作に用いるフレンジテクニック

*鱒見 進一1 (1. 九州歯科大学口腔機能学講座顎口腔欠損再構築学分野)
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キーワード:

下顎総義歯、デンチャースペース、フレンジテクニック

無歯顎者の顎堤は経年的に吸収が進行することは知られているが,高度顎堤吸収を有する無歯顎者に対する欠損補綴歯科治療は,従来法による製作では臨床的に困難なことが多く,いわゆる難症例として取り扱われてきた.未曾有の超高齢社会となったわが国の歯科医療においては,このような難症例に遭遇する機会が多くなってきている.高度顎堤吸収症例に対する総義歯製作においては,古くからデンチャースペース記録法が有効であることが知られている.義歯床面積が上顎に比べて小さく,可動組織が周囲を取り囲んでいる下顎総義歯を安定させるためには,可及的に側方圧を義歯の維持として利用するために,デンチャースペースの動態を記録し,これに調和した義歯を製作することが有効である.フレンジテクニックは,デンチャースペース記録法の代表的な方法の一つであり,これまで特殊印象として保険収載されていたが,実際には仮床製作に際して行われる技術であるため算定が難しい状況であった.2024年6月から,下顎総義歯の製作に当たって人工歯列弓や義歯床研磨面等の形態を決定するためにフレンジテクニックを行った場合には,「仮床試適4その他の場合」が算定できることとなった.また,下顎総義歯の製作に当たり,「仮床試適3総義歯」を行った別の日に「仮床試適4その他の場合」を行った場合は,それぞれ算定して差し支えないこととなった.
本講演では,フレンジテクニックを用いた下顎総義歯のデンチャースペース採得の臨床術式について詳細に解説する所存である.