講演情報

[DSPC-2]新規医療技術としての「接着カンチレバー装置」の考え方

*田上 直美1 (1. 長崎大学医歯薬学総合研究科)
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キーワード:

接着カンチレバー装置、接着ブリッジ、前歯少数歯欠損補綴

令和6年度診療報酬改定にて収載された「接着カンチレバー装置」は,前歯少数歯欠損に対する,新規医療技術としての補綴装置である。その目的や構造は,いわゆる「ブリッジ」と近似した装置であるが,支台歯数,片持ち梁(カンチレバー)設計等の観点から,保険診療上はブリッジと異なる「装置」として定義されている。
 保険診療の場合,支台歯に実質欠損が少ない前歯少数歯欠損には両側隣在歯を支台とする接着ブリッジが適用されることが多く,2017年改訂版「接着ブリッジのガイドライン」でもカンチレバー形態の装置は推奨されていなかった。しかしながら,海外においては以前より前歯少数歯欠損補綴法のオプションとして認知され,近年は多くの良好な臨床成績も報告されている。このような状況を鑑み,2024年追補版「接着ブリッジのガイドライン」では「接着延長ブリッジ」の使用が弱く推奨されるに至った。接着カンチレバー装置の利点は1歯のみの歯質削除で済むこと,仮に脱離した場合も再装着の可能性が高いことである。チェアタイムが短いため術者,患者双方の負担が軽く,金属量も少なく経済的にも有益である。脱離の際に一瞬で審美性が増悪するという欠点はあるが,それ故に金属リテーナーは変形しづらく,再装着に良好な予後が期待できる。
 本講演では,新たな医療技術として保険収載された接着カンチレバー装置の考え方について解説する。