講演情報

[ES1-2]マクロファージに焦点を当てたインプラント治療戦略

*小堤 涼平1 (1. 長崎大学生命医科学域(歯学系) 口腔インプラント学分野)
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キーワード:

デンタルインプラント、マクロファージ、細胞移植

ブローネマルク先生がオッセオインテグレーテッドインプラントの臨床応用を開始して60年が経過し,デンタルインプラント治療は,現在,欠損補綴歯科治療の有効な治療選択肢としてその地位を確立するようになってきている.しかしながら,治療後の有害事象としてインプラント周囲炎などの生物学的不具合を惹起する可能性があり,一旦発症すると対応に苦慮することもしばしばである.一方,マクロファージ(MΦ)は,創傷治癒や組織恒常性の維持に必要不可欠な細胞であり,オッセオインテグレーション獲得時も,埋入窩の創傷治癒過程において,MΦのサブタイプである炎症性M1MΦや組織修復性M2MΦの分布や機能が重要な働きを担っている.演者はMΦに焦点を当てて薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)の基礎研究を行っているが,その一連の研究結果から,M2MΦを応用した細胞移植療法が,MRONJ病変部の硬軟組織治癒に有効である可能性を見い出した.また,骨髄に存在するMΦサブタイプで,骨の創傷治癒や骨組織の恒常性維持に重要な働きを担うOsteomacsにも着目し,それらが病変部硬組織に与える影響についても検討を行ってきた.本セッションでは,インプラント周囲組織のMΦに焦点を当て,オッセオインテグレーション獲得時におけるMΦの働きを解説するとともに,演者が基礎研究で応用してきたMΦの細胞移植療法がインプラント治療における新たな治療戦略としてどのように応用していけるかを,皆さんと一緒に議論していきたい.