講演情報

[ES2-1]口腔機能と全身に関する臨床研究の課題とその解決法~因果の証明に近づくための創意工夫~

*三野 卓哉1 (1. 大阪歯科大学歯学部 欠損歯列補綴咬合学講座)
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キーワード:

口腔機能、臨床研究、中間因子

近年,口腔機能の低下と,認知症,フレイルおよび動脈硬化性疾患等の全身状態の悪化との関連が報告されるようになり,“健全な口腔機能の回復や保全がこれらの全身疾患の予防や,全身健康の維持に貢献する”という仮説が支持されつつある.しかし,口腔機能の維持あるいは回復が真に全身疾患の発症を予防するかどうかは未だ明らかとはいえない.その理由として,口腔機能と全身疾患の因果関係を明らかにする研究の遂行が難しい点が挙げられる.例えば,コホート研究のデザインを採用すれば,倫理的な問題を生じずに因果関係に言及できるが,コホート研究においてベースライン時の口腔機能と追跡時の全身疾患の発症に関連を認めても,ベースライン時の口腔機能が要因で全身疾患が発症したと言い切ることが難しい部分がある.つまり,もともと他の要因があった結果として,口腔機能の低下と全身疾患の発症が時系列に生じた(要因と結果では無く,結果と結果の関係)可能性を秘める.今後,口腔機能の維持あるいは回復が真に全身疾患の発症を予防するのかどうかを明らかにするには,従来のコホート研究に加えて,口腔機能と全身疾患の発症を繋ぐ機序を基礎研究で検討する,あるいは口腔機能と全身疾患の発症を繋ぐ中間因子も含めて評価可能なコホート研究デザインを組むなどの工夫が必要に思える.
 本講演では, “口腔機能から全身へ:臨床研究の現状”と題し,セッションの導入として既存の口腔機能と全身健康に関する臨床研究を紹介させていただき,後の2名の演者にお繋ぎする予定である.