講演情報
[ES2-3]口腔機能と全身に関する臨床研究の課題とその解決法~因果の証明に近づくための創意工夫~
*豆野 智昭1 (1. 大阪大学大学院歯学研究科 有床義歯補綴学・高齢者歯科学講座)
ランダム化比較試験は,因果関係を厳密に検証できる唯一の研究デザインとされ,特に医学・公衆衛生分野では臨床研究のゴールドスタンダードと位置付けられている.例えば,欠損補綴治療を行う群と行わない群にランダムに割り付け,全身疾患の発症をエンドポイントとする介入研究をデザインすることで,口腔機能の回復が全身疾患の予防に寄与するかを真に評価できる.しかし,これには長期的な追跡調査を要し,何より倫理的制約が伴うため,実施は困難である.このような背景において,より実現可能性に優れる観察研究が重要な役割を果たす.一方で観察研究では,本来因果関係のない要因同士の相関,いわゆる疑似相関が生じることが大きな課題となる.この問題を克服するため,因果推論の分野ではさまざまなアプローチが提唱されており,その手法は大きく二つに分類される.一つは因果経路が既知であることを前提に,どのような条件で予測や説明が可能であるかを明らかにする方法であり,もう一つは因果経路を未知とし,どの条件下で因果経路が推測可能であるかを探索する方法である.いずれの手法においても,因果関係を媒介する中間因子の観測が重要な要素となる.
本講演では,“口腔機能から全身へ:中間因子を介した因果関係の探索”をテーマに,口腔機能と高齢者の認知・精神機能との関連における因果関係を考察する.発表者のこれまでの取り組みを基に,観察研究による因果推論の可能性と限界を論じるとともに,今後の研究の方向性について展望を示したい.
本講演では,“口腔機能から全身へ:中間因子を介した因果関係の探索”をテーマに,口腔機能と高齢者の認知・精神機能との関連における因果関係を考察する.発表者のこれまでの取り組みを基に,観察研究による因果推論の可能性と限界を論じるとともに,今後の研究の方向性について展望を示したい.