講演情報
[ES4-1]新時代のデジタル「補綴歯科教育」を考える
*木原 琢也1、井川 知子1、横山 史2、重田 優子1、重本 修伺1、小川 匠1 (1. 鶴見大学歯学部クラウンブリッジ補綴学講座、2. 鶴見大学歯学部歯学科)
歯型彫刻や支台歯形成、ワックスアップなどの補綴技能教育において、学習者は主に教科書の閲覧や模型の観察、指導者によるデモンストレーションを通じて学び、自ら練習を重ねて習得を進める。しかし、これらの技能の習得は難易度が高く、時間を要することが多い。そこでより効果の高い補綴技能教育を実現するために、拡張現実(Augmented Reality: AR)や触覚共有技術を歯科に応用したシステムを紹介する。本研究で用いたARとは、現実世界にデジタル情報をヘッドマウントディスプレイを介して重ね合わせることで、視覚的な情報提示を強化する技術である。この技術を歯科領域に応用し、支台歯形成時の切削距離や角度のリアルタイム表示が可能なシステムを開発した。これは、学習者が支台歯形成時に削除量をリアルタイムに、直感的に把握することを可能とした。さらに名古屋工業大学が開発した触覚共有技術との融合により、視覚と触覚のデジタル情報を付加したシステム構築の実装に着手した。触覚共有技術とは、ウェアラブル皮膚振動センサと振動子を用い、個人の触覚を他者と共有できる技術である。通常、指導者の感覚を学習者が直接感じ取ることはできないが、本技術を活用することで、歯型彫刻や支台歯形成などの手技の感覚を実際に体験できるようになり、技能教育の方法を新しく展開できる可能性がある。補綴技能教育において、従来の教育方法を基盤としつつ、これらの技術を適切に応用することで、技能習得の効率化や学生の意欲向上に貢献することを目指す。