講演情報

[ES5-2]インプラント治療の長期安定を目指して 力学的観点に関する考察

*向坊 太郎1 (1. 九州歯科大学口腔再建リハビリテーション学分野)
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インプラントの長期予後が期待できるようになった一方で、インプラント周囲の天然歯の喪失により治療計画時には想定していなかった咬合状態への対応を迫られるケースが増加している。インプラントと天然歯では生体力学的特性が大きく異なるため、このような状況下での咬合再構築には慎重な診査・診断が求められる。既存のインプラントが埋入されている症例では、新規インプラントの追加埋入も選択肢となる。しかし、隣在歯の喪失が進行し多数歯欠損へ移行した症例においては、新規インプラントの最適な配置位置や長期予後に関する明確なエビデンスやガイドラインは確立されていない。既存インプラントの除去・再埋入という選択肢もあるが、患者の全身状態や経済的な理由により、治療方針の決定に苦慮することも多い。既存インプラントを活用して上部構造を再製作する際には、フィクスチャーの破折の有無やインプラントメーカーの補綴システムの互換性など、詳細な術前診査が不可欠である。超高齢社会の進展とインプラント治療患者数の増加に伴い、インプラント治療後に天然歯を喪失し、咬合再構築を必要とする症例は今後さらに増加することが予想される。本セッションでは、臨床例を供覧し、生体力学的観点から咬合再構成の方法を検討するとともに、長期的視点に立ったインプラント治療のあり方について考察する機会としたい。