講演情報
[ES6-1]細胞系譜解析を応用した生命現象の理解
*大野 充昭1 (1. 岡山大学学術研究院 医歯薬学域 インプラント再生補綴学分野)
キーワード:
細胞系譜解析、scRNA-seq、補綴
組織幹細胞を起点に臓器の発生や再生を理解することが,再生医療を始めとした様々な研究に繋がることから,scRNA-seq解析や細胞系譜マウスを応用して様々な臓器の組織幹細胞の探索が行われている.しかし,未だすべての臓器の組織幹細胞は,同定されていない.その理由の一つとして,scRNA-seqのvelocity解析などの分化経路推定解析の精度の低さが挙げられる.実際に我々は,発生時期の様々なステージの組織から細胞を単離してscRNA-seqを行い,組織幹細胞を同定することを目的に,分化経路推定解析を試みた.しかし,解析に用いる細胞集団や遺伝子セットを変更すると推定される分化経路が真逆になるなど,推測の域を脱することはできず,信頼性の欠く解析結果になることをしばしば経験した.一方,近年,細胞バーコーディング技術とscRNA-seqを融合して,細胞系譜と遺伝子発現プロファイルを統合的に解析する試みが相次いで報告された.中でも,Bowlingらは,CRISPR/Cas9法を応用して,細胞を識別するためのバーコードをDNAに付加し,それぞれの細胞の遺伝子発現情報とバーコード情報を紐付けて解析することで,正確に1細胞レベルで細胞の系譜解析が可能な,CARLIN(CRISPR Array Repair LINeage tracing)マウスの開発に成功し,様々な細胞系譜解析に応用可能であることを報告している(Cell, 2020).本セッションでは、DNAバーコードマウスを応用した細胞系譜解析の基礎と応用を概説し、最新の研究成果を紹介する予定である.