講演情報

[MSY-2]咬合再構成治療における咬合挙上の要点 - 何を診てどう治療するか ? -

*渡辺 隆史1,2 (1. 日本顎咬合学会、2. 小滝歯科医院)
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キーワード:

咬合挙上、咬合再構成治療、低侵襲治療

咬合の再構成を必要としている症例においては、咬合崩壊に伴う歯の挺出や咬耗などによって生じるクリアランス不足や審美障害の改善のために、咬合挙上が必要になることも少なくない。 咬合挙上は、下顎頭を中心にした下顎骨の回転運動によって行われるため、アングルのⅠ級咬合はよりⅡ級に、Ⅱ級ではオーバージェットが強くなり、Ⅲ級ではよりⅠ級に近づくことになる。挙上量が大きければ、下顎頭は回転運動を伴いながら前下方に滑走運動するため、顆頭位が大きく変化する。このように、咬合挙上に際しては下顎位に変化が生じるため、その挙上量に細心の注意を払う必要がある。 また、咬合挙上に伴い補綴的な介入範囲は最大となる。一度咬合挙上を治療計画に組み入れれば、全顎的な治療が必要となり、侵襲の大きな治療を強いられることになるため、咬合に対する知識と補綴治療に対する卓越した技術が必要になるだろう。さらに、天然歯に勝るものはないことを鑑みれば、良好な口腔環境を長期的に維持するために、補綴的な介入範囲を最小限に抑えた、いわゆる低侵襲な治療方法を模索する必要も生じてくる。すなわち、咬合挙上に伴う補綴的な介入範囲の拡大に対して、低侵襲治療の概念をいかにして組み入れるかが、咬合再構成治療後の予後に大きく影響してくると考えることができる。  これらのことを踏まえて、咬合再構成治療における咬合挙上の要点を整理したうえで、咬合挙上に伴う顎位の変化にどのように対応したら良いか、可能な限り低侵襲な治療を選択するにはどうしたら良いかなど、咬合挙上の手法を実際の臨床症例を通して解説する。