講演情報
[P-100]全部床義歯装着患者における咀嚼能力と咬合力
*新妻 智憲1、浅沼 直樹2、渡曾 侑子1,2、鈴木 達大1、川名 桃香1、永田 琴乃1、水橋 史1,2 (1. 日本歯科大学大学院 新潟生命歯学研究科 機能性咬合治療学、2. 日本歯科大学 新潟生命歯学部 歯科補綴学第1講座)
【目的】
超高齢社会の本邦においては平均寿命の延伸が認められる一方,健康寿命との間には差があり,口腔機能低下症患者は増加している.口腔機能低下症における咀嚼能力と咬合力に関しては,義歯の状態に影響を受けることが多いと考えられる.しかし,義歯装着者の咀嚼能力および咬合力については十分に明らかにされていない.本研究では,全部床義歯装着者の口腔機能として,咀嚼能力,咬合力および年齢の関係を検討することを目的とした.
【方法】
対象者は,日本歯科大学新潟病院に来院し,上顎全部床義歯の製作を行い,経過観察に移行している患者18名(男性9名,女性9名,平均年齢81.8±9.5歳)である.本研究は日本歯科大学新潟生命歯学部倫理委員会の承認を得て行った(承認番号ECNG-R-548).咀嚼能力の評価は,グミゼリーを用いた咀嚼能力検査法で行った.2gのグミゼリー(グルコラム®,GC)を20秒間,主咀嚼側で自由咀嚼させた後,10 mLの水で含嗽し,グミと水をろ過用メッシュ内に吐き出すよう指示した.センサーチップをグルコセンサーGS-Ⅱ®(GC)に挿入し,コップ内のろ液を採取用ブラシで採取,センサーチップの先端に着け,グルコース溶出量を測定した.咬合力の評価は,デンタルプレスケールⅡ®(GC)を用いて行った.対象者には,感圧シートを挿入後,義歯を装着した状態で咬頭嵌合位における3秒間のクレンチングを行うよう指示した.検査後の感圧シートを,バイトフォースアナライザ®(GC)を用いて分析し,咬合力を測定した.統計解析は,咀嚼能力と咬合力の関係をPearsonの相関係数にて,咀嚼能力,咬合力と年齢の関係をSpearmanの相関係数にて行った.
【結果と考察】
上顎全部床義歯装着者の咀嚼能力は平均値151.4±45.7 mg/dLであり,咬合力は平均値336.8±136.8 Nであった.咀嚼能力と咬合力の間には相関関係がみられた(r = 0.52, p < 0.05).咀嚼能力および咬合力と年齢との間には有意な相関は認められなかった.本研究の結果から,全部床義歯装着者において,咀嚼能力と咬合力には相関があることが明らかとなり,補綴治療により口腔機能を回復することでオーラルフレイルを予防し,健康寿命の延伸に繋げることができる可能性が示唆された.今後はさらに対象者数を増やし,検討を行う所存である.
超高齢社会の本邦においては平均寿命の延伸が認められる一方,健康寿命との間には差があり,口腔機能低下症患者は増加している.口腔機能低下症における咀嚼能力と咬合力に関しては,義歯の状態に影響を受けることが多いと考えられる.しかし,義歯装着者の咀嚼能力および咬合力については十分に明らかにされていない.本研究では,全部床義歯装着者の口腔機能として,咀嚼能力,咬合力および年齢の関係を検討することを目的とした.
【方法】
対象者は,日本歯科大学新潟病院に来院し,上顎全部床義歯の製作を行い,経過観察に移行している患者18名(男性9名,女性9名,平均年齢81.8±9.5歳)である.本研究は日本歯科大学新潟生命歯学部倫理委員会の承認を得て行った(承認番号ECNG-R-548).咀嚼能力の評価は,グミゼリーを用いた咀嚼能力検査法で行った.2gのグミゼリー(グルコラム®,GC)を20秒間,主咀嚼側で自由咀嚼させた後,10 mLの水で含嗽し,グミと水をろ過用メッシュ内に吐き出すよう指示した.センサーチップをグルコセンサーGS-Ⅱ®(GC)に挿入し,コップ内のろ液を採取用ブラシで採取,センサーチップの先端に着け,グルコース溶出量を測定した.咬合力の評価は,デンタルプレスケールⅡ®(GC)を用いて行った.対象者には,感圧シートを挿入後,義歯を装着した状態で咬頭嵌合位における3秒間のクレンチングを行うよう指示した.検査後の感圧シートを,バイトフォースアナライザ®(GC)を用いて分析し,咬合力を測定した.統計解析は,咀嚼能力と咬合力の関係をPearsonの相関係数にて,咀嚼能力,咬合力と年齢の関係をSpearmanの相関係数にて行った.
【結果と考察】
上顎全部床義歯装着者の咀嚼能力は平均値151.4±45.7 mg/dLであり,咬合力は平均値336.8±136.8 Nであった.咀嚼能力と咬合力の間には相関関係がみられた(r = 0.52, p < 0.05).咀嚼能力および咬合力と年齢との間には有意な相関は認められなかった.本研究の結果から,全部床義歯装着者において,咀嚼能力と咬合力には相関があることが明らかとなり,補綴治療により口腔機能を回復することでオーラルフレイルを予防し,健康寿命の延伸に繋げることができる可能性が示唆された.今後はさらに対象者数を増やし,検討を行う所存である.