講演情報

[P-102]静電誘導型発電シートを用いた口腔内装置型リアルタイム咬合力測定装置の開発

*成原 大衣智1、田中 志叡1、土方 亘2、依田 信裕1 (1. 東北大学大学院歯学研究科 口腔システム補綴学分野、2. 東京科学大学工学院 機械系)
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【目的】
 ブラキシズムなどのパラファンクション時に歯列上に発現する過大な咬合力は,Tooth Wearや補綴装置の破損,顎関節症の発症などの要因となる.これらに適切に対処するためには,パラファンクション発生時に歯列上に発現する咬合接触部位,同部位における咬合力の大きさ,すなわち歯列上咬合力分布を理解することが重要である.しかし,現時点でそれらを客観的に把握しうる方法は無い.
 当分野では,エレクトレットと誘電エラストマーから構成される静電誘導型発電シート1)に着目した.本発電シートは,咬合力などの圧縮力が加わることで発電する構造を有し,発電量から圧縮力を逆算可能である.本研究は,この発電シートを活用した咬合力測定装置を開発するための基盤技術の構築を目的とした.
【方法】
 一般臨床で用いられる下顎型オクルーザルスプリントをベースとし,左側第一大臼歯相当部に発電シートを包埋,同部に加わる咬合力を測定対象とした装置を製作した(図1).自作の咬合力シミュレータを用いたベンチテストにより,想定される咬合力と同等の荷重(0~150N)を加えた時の測定装置からの出力特性を検証した.また,口腔内使用を想定し,測定装置からの出力に対する環境温度の影響を調査した.
 次に,健常有歯顎者5名を対象に,上記の方法にて下顎左側第一大臼歯部の咬合力を対象とした測定装置を製作,口腔内咬合力測定を実施した.測定時のタスクはタッピング,クレンチング,グラインディングおよびガム咀嚼とした.
【結果と考察】
 ベンチテストの結果,口腔内相当の温度環境下においても本測定装置からは安定した出力を得ることができた.口腔内測定の結果,タッピングやクレンチングなどの垂直方向を主体とする咬合力に対しては正確な測定が可能であった.また,グラインディングのような水平方向を主体とする咬合力に対しては,発電シートを頬舌側咬頭内斜面に別々に配置することで,咬合力の方向性をも算出することが可能であり,ブラキシズム時の歯列上咬合力を把握できる可能性が示された.
【参考文献】
1)Ichikawa K, Hijikata W. Energy harvesting from biting force with thin sheet harvester based on electret and dielectric elastomer. Nano Energy 2022; 99:107357.