講演情報
[P-104]義歯製作と食事指導が栄養バイオマーカーに与える影響:ランダム化比較試験
*酒向 遥香1、安部 友佳2、楠本 友里子1、松本 貴志2、横井 匠1、畑中 幸子3、向井 友子4、原 真央子1、河田 蘭子1、横山 紗和子1、古屋 純一3、馬場 一美2 (1. 昭和医科大学歯学部歯科補綴学講座歯科補綴学部門、2. 昭和医科大学大学院歯学研究科歯科補綴学分野、3. 昭和医科大学大学院歯学研究科口腔機能管理学分野、4. 昭和医科大学歯学部口腔健康管理学講座口腔機能管理学部門)
【目的】
無歯顎者の栄養状態の改善には補綴治療だけでなく食事指導が必要であると報告されているが1),より有効な食事指導の実施タイミングについては明らかでない.本研究は,補綴治療と食事指導の実施順序が栄養状態に関連する血液バイオマーカーに与える影響を探索的に検討することを目的とした.
【方法】
新義歯を希望する片顎無歯顎患者38名(男性17名,女性21名,平均年齢73.4±10.7歳)を,A群:義歯製作後に食事指導を行う群(n=19),B群:食事指導後に義歯製作を行う群(n=19)の2群にランダムに割り当てた.義歯は従来法により製作され,また,食事指導は実施直前の評価結果を基に行われた.評価は介入前後で行い,血液検査により栄養状態に関連するバイオマーカー17項目を調査した.加えて,簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)による食事摂取量,デンタルプレスケールⅡ(ジーシー)による咬合力,グルコラム(ジーシー)による咀嚼能力を評価した.介入前後の結果をウィルコクソンの符号順位検定により群内比較し,さらに介入前後の差分を変化量としてマン・ホイットニーのU検定により群間比較した(有意水準5%).
【結果と考察】
群内比較では,両群とも,介入後に咬合力が有意に増加したが(p = 0.011),血液バイオマーカーの改善は認めなかった.B群ではBDHQによるニンジンとカボチャの摂取量(p = 0.028)が有意に増加した.また,B群はA群と比較し,血液検査によるメチオニン濃度変化量(p = 0.033),BDHQによる脂質が少ない魚の摂取変化量(p = 0.036)が有意に高く,脂質(p = 0.029),飽和脂肪酸(p = 0.007)の摂取変化量が有意に低かった.
本研究結果より,新義歯装着前に食事指導を行う方がアミノ酸の血液バイオマーカーにより大きな影響を与える可能性が示唆されたが,今後より詳細な検討が必要である.
【参考文献】
1) Suzuki H, Kanazawa M, Komagamine Y, et al. Changes in the nutritional statuses of edentulous elderly patients after new denture fabrication with and without providing simple dietary advice. J Prosthodont Res 2019;63:288-292.
無歯顎者の栄養状態の改善には補綴治療だけでなく食事指導が必要であると報告されているが1),より有効な食事指導の実施タイミングについては明らかでない.本研究は,補綴治療と食事指導の実施順序が栄養状態に関連する血液バイオマーカーに与える影響を探索的に検討することを目的とした.
【方法】
新義歯を希望する片顎無歯顎患者38名(男性17名,女性21名,平均年齢73.4±10.7歳)を,A群:義歯製作後に食事指導を行う群(n=19),B群:食事指導後に義歯製作を行う群(n=19)の2群にランダムに割り当てた.義歯は従来法により製作され,また,食事指導は実施直前の評価結果を基に行われた.評価は介入前後で行い,血液検査により栄養状態に関連するバイオマーカー17項目を調査した.加えて,簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)による食事摂取量,デンタルプレスケールⅡ(ジーシー)による咬合力,グルコラム(ジーシー)による咀嚼能力を評価した.介入前後の結果をウィルコクソンの符号順位検定により群内比較し,さらに介入前後の差分を変化量としてマン・ホイットニーのU検定により群間比較した(有意水準5%).
【結果と考察】
群内比較では,両群とも,介入後に咬合力が有意に増加したが(p = 0.011),血液バイオマーカーの改善は認めなかった.B群ではBDHQによるニンジンとカボチャの摂取量(p = 0.028)が有意に増加した.また,B群はA群と比較し,血液検査によるメチオニン濃度変化量(p = 0.033),BDHQによる脂質が少ない魚の摂取変化量(p = 0.036)が有意に高く,脂質(p = 0.029),飽和脂肪酸(p = 0.007)の摂取変化量が有意に低かった.
本研究結果より,新義歯装着前に食事指導を行う方がアミノ酸の血液バイオマーカーにより大きな影響を与える可能性が示唆されたが,今後より詳細な検討が必要である.
【参考文献】
1) Suzuki H, Kanazawa M, Komagamine Y, et al. Changes in the nutritional statuses of edentulous elderly patients after new denture fabrication with and without providing simple dietary advice. J Prosthodont Res 2019;63:288-292.