講演情報

[P-110]MR拡散テンソル画像を応用した咬筋および内・外側翼突筋内部の拡散異方性解析

*木之村 史織1、菅野 武彦2、小川 徹3、佐々木 啓一4,5、依田 信裕1 (1. 東北大学大学院歯学研究科 口腔システム補綴学分野、2. 東北・北海道支部、3. 東北大学病院 総合歯科診療部、4. 東北大学大学院歯学研究科、5. 宮城大学)
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【目的】
 顎口腔系のさまざまな機能運動は,咀嚼筋群ならびに機能分化した各筋内部の協調活動により遂行される.一般に各筋の筋活動解析には筋電図が用いられ,筋機能に対応する形態学的な把握にはMRI解析が用いられる.しかし筋内部の筋線維構造を詳細に把握することは難しく,咀嚼筋内部の筋線維構造と機能分化との関連は不明な点が多い.
 演者らは,これらを解決する一助として拡散テンソル画像(diffusion tensor imaging,以下DTI)1)を応用し,咀嚼筋内部の筋線維の配向性の解析手法を構築した.本研究では,咬筋および内・外側翼突筋を対象に筋線維の拡散異方性強度を表す指標である FA(fractional anisotropy)と,みかけの拡散の大きさを表す指標である ADC(apparent diffusion coefficient)をマッピングし,異なる下顎位で比較評価した.
【方法】
 健常成人男性5名を対象に,3T超高磁場磁気共鳴画像撮像装置を用いて,顔面頭蓋3DT1-TFEおよびDTIの連続撮像を下顎安静位と切歯間距離25 mmの開口位にて実施した. DTI解析ソフト(FMRIB's Software Library,MRtrix3)により,両下顎位における右側咬筋および内・外側翼突筋のFAおよびADCを3次元的にマッピングした.
【結果と考察】
 対象筋群におけるFAマッピングの結果,開口位では下顎安静位と比較してFAの低い部位の増加,すなわち開口に伴う拡散異方性の低下が示された.一方,ADCマッピングでは,みかけの拡散係数の下顎位間での差は認められなかった.これらの結果から,DTIを応用した本解析手法により,咀嚼筋内の各拡散パラメータを詳細に把握することができ,下顎位の変化に伴う筋内各部の筋線維走行変化を定量的に捉えることの可能性が示唆された.今後,筋機能障害に伴う形態的変化の客観的評価,診断への応用が期待される.
【参考文献】
1) Sugano T, Ogawa T, Yoda N et al. Morphological comparison of masseter muscle fibres in the mandibular rest and open positions using diffusion tensor imaging. J Oral Rehabil 2022; 49: 608- 615.