講演情報

[P-112]エビデンスに基づく舌機能訓練タスクの選択:mfMRIによる舌筋活動分布解析の応用

*佐藤 全弘1、山口 哲史1、服部 佳功1 (1. 東北大学大学院歯学研究科加齢歯科学分野)
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【目的】
 舌抵抗訓練により口腔機能の向上を図るには,その機能に寄与する筋の活動を訓練タスクによって惹起する必要がある.本研究では,舌圧方向の異なる訓練タスクと機能的訓練効果との関連を,舌内局所筋活動分布の類似性から検証した.
【方法】
 研究参加への同意が得られた若年健常者20名(男性13名,平均27.8歳)を10名ずつ挙上訓練群と側方訓練群に振り分けた.各群の対象者は1日10回3セット,週3日の舌抵抗訓練を4週間行った.訓練期間の前後には,各最大舌圧およびオーラルディアドコキネシス(ODK)を測定するとともに,訓練と同じタスクによる骨格筋機能的磁気共鳴画像(mfMRI)を撮像した.また,別の5名(男性3名,平均28.4歳)を対象として,ODK実施時のmfMRIを撮像した.訓練による舌圧とODKの変化について統計解析した.mfMRI解析では,テンプレート画像を用いて全対象者のT2強調画像を空間的に標準化し,統計マッピングによって舌内部の有意な筋活動領域を特定するとともに,効果量mapによって筋活動分布を評価した.舌圧タスク時とODK発語時の正規化した効果量mapから,筋活動分布の類似性の指標として差分絶対値平均(Mean of Absolute Difference: MAD)を算出し,訓練によるODK変化との関連について解析した.
【結果と考察】
  挙上,側方訓練群ともに訓練によって挙上舌圧・側方舌圧が有意に上昇した.ODKは挙上訓練群にて<ta>のみ有意に増加した.舌内部の有意な筋活動領域は訓練後の舌圧タスクのみで検出され,挙上タスクでは舌背部とオトガイ舌骨筋部,側方タスクでは舌背部と舌根部であった(FDR補正p<0.05).これは,強い筋活動が訓練によって上記の領域に収束したことを示唆している.効果量mapの比較では(図1),挙上タスク時と<ta>発語時のmapを比較したMADが最小であった(図2).これは,挙上訓練と<ta>発語時の筋活動分布が最も類似していることを示しており,挙上訓練群における<ta>の有意な回数増加は,<ta>の発語に寄与する筋を挙上訓練が最も効率的に強化した結果であることを示唆している.今後,様々なタスクによる舌抵抗訓練と,嚥下・咀嚼等の機能における舌筋活動分布の類似性を検討することで,エビデンスに基づいた舌抵抗訓練タスクの選択が可能となることが期待される.