講演情報
[P-114]高齢者の口腔機能低下症と栄養摂取状態の関連
*王丸 寛美1、津田 緩子1、伊吹 禎一1、萱野 綾華2、神野 哲平1、和田 尚久1,2 (1. 九州大学歯学部附属病院 口腔総合診療科、2. 九州大学大学院歯学研究院総合診療歯科学分野)
【目的】
我が国における超高齢化に伴い,歯科では口腔機能の軽微な低下や食の偏りなどを「オーラルフレイル」,進行した状態を「口腔機能低下症」,さらに病的に進行した状態を「口腔機能障害」として専門医の介入を要するとし、関心が高まっている.一般に複数項目の口腔機能低下を均一に定量評価することが多く,各項目の口腔機能低下が栄養摂取招待へ与える影響は十分に明らかにされていない.本研究は,高齢者の口腔機能低下の原因とその影響特性を明らかにすることを目的に,各口腔機能が栄養摂取状態悪化の有無にどのように関連しているかを評価した.
【方法】
対象:九州大学病院口腔総合診療科を2022年5月から2024年12月の期間に定期管理を含む歯科治療を目的に受診し,調査の主旨に同意を得た50歳以上の患者159名とした.
方法:口腔機能因子に関して口腔機能検査7項目(口腔衛生状態,口腔粘膜湿潤度,オーラルディアドコキネシス,咬合力,舌圧,咀嚼機能,嚥下機能)を行い,3項目位以上「機能低下」と判断された者について「口腔機能低下症」とした.栄養状態の評価は簡易栄養状態評価表(Mini Nutritional Assessment®)を用い「低栄養のおそれあり」「低栄養」を評価した.栄養状態良好群と低栄養もしくは低栄養が疑われた患者群間で,口腔機能低下症の有病率,および各口腔機能低下の発症頻度についてカイ2乗検定にて比較を行った.
【結果と考察】
被験者159名の平均年齢は72.2歳,口腔機能低下症と評価された者は85名(53.5%)であった.そのうち栄養状態が「低栄養のおそれ」,または「低栄養」と評価された被験者は63名(50代5名,60代12名,70代30名,80代16名)で全体の39.6%であった.栄養摂取状態悪化の有り無しの2群間で,口腔機能低下症,オーラルディアドコキネシス(パ,タ),舌圧低下の有病比に統計的有意差を認めた(P<0.05).
本研究の被験者は歯科受診時に口腔機能や栄養状態についての特訴を認めていない.患者自身に栄養状態の悪化に自覚を認めていなくてもその約40%に栄養摂取状態不良を認めたこと,その患者群において口腔機能の低下に特性があることが示唆された.個別化医療を考えるうえで,口腔機能評価と共に全身状態の評価が有用であると考えられた.
我が国における超高齢化に伴い,歯科では口腔機能の軽微な低下や食の偏りなどを「オーラルフレイル」,進行した状態を「口腔機能低下症」,さらに病的に進行した状態を「口腔機能障害」として専門医の介入を要するとし、関心が高まっている.一般に複数項目の口腔機能低下を均一に定量評価することが多く,各項目の口腔機能低下が栄養摂取招待へ与える影響は十分に明らかにされていない.本研究は,高齢者の口腔機能低下の原因とその影響特性を明らかにすることを目的に,各口腔機能が栄養摂取状態悪化の有無にどのように関連しているかを評価した.
【方法】
対象:九州大学病院口腔総合診療科を2022年5月から2024年12月の期間に定期管理を含む歯科治療を目的に受診し,調査の主旨に同意を得た50歳以上の患者159名とした.
方法:口腔機能因子に関して口腔機能検査7項目(口腔衛生状態,口腔粘膜湿潤度,オーラルディアドコキネシス,咬合力,舌圧,咀嚼機能,嚥下機能)を行い,3項目位以上「機能低下」と判断された者について「口腔機能低下症」とした.栄養状態の評価は簡易栄養状態評価表(Mini Nutritional Assessment®)を用い「低栄養のおそれあり」「低栄養」を評価した.栄養状態良好群と低栄養もしくは低栄養が疑われた患者群間で,口腔機能低下症の有病率,および各口腔機能低下の発症頻度についてカイ2乗検定にて比較を行った.
【結果と考察】
被験者159名の平均年齢は72.2歳,口腔機能低下症と評価された者は85名(53.5%)であった.そのうち栄養状態が「低栄養のおそれ」,または「低栄養」と評価された被験者は63名(50代5名,60代12名,70代30名,80代16名)で全体の39.6%であった.栄養摂取状態悪化の有り無しの2群間で,口腔機能低下症,オーラルディアドコキネシス(パ,タ),舌圧低下の有病比に統計的有意差を認めた(P<0.05).
本研究の被験者は歯科受診時に口腔機能や栄養状態についての特訴を認めていない.患者自身に栄養状態の悪化に自覚を認めていなくてもその約40%に栄養摂取状態不良を認めたこと,その患者群において口腔機能の低下に特性があることが示唆された.個別化医療を考えるうえで,口腔機能評価と共に全身状態の評価が有用であると考えられた.