講演情報

[P-116]低強度の持続的クレンチングが咬筋の圧痛閾値と筋硬度に及ぼす影響

*宮園 敬資1、石山 裕之1、西山 暁2、笛木 賢治1 (1. 東京科学大学 咬合機能健康科学分野、2. 東京科学大学 総合診療歯科学分野)
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【目的】
 総負荷(強度×時間)を規格化した持続的クレンチングを行わせた場合,低強度×長時間のタスクで咬筋酸素飽和度の回復遅延を認めたとの報告があるが1),同様の条件で臨床的な圧痛閾値や筋硬度を調べた報告はない.本研究は,総負荷を規格化した2種類の持続的クレンチングが,咬筋の圧痛閾値および筋硬度に与える影響を明らかにする事を目的とした.
【方法】
 顎口腔領域に異常を認めない健常者35名(男性18名,女性17名,平均年齢29.4±6.6歳)を対象とした.表面電極で左側咬筋の筋電図を測定し,最大随意クレンチング(maximum voluntary clenching:以下,MVC)の10%および50%を持続的クレンチングタスクとした.参加者は2種類のクレンチング(50%MVC群:50%MVCで15秒を30セット,10%MVC群:10%MVCで75秒を30セット)を行った.測定部位はクレンチング時の右側咬筋最大豊隆部とし, タスク前,直後,10分後,20分後,30分後における圧痛閾値と筋硬度を計測し,群内の経時的評価および各計測時間の群間差を比較した.
【結果と考察】
 タスク前を100%とした場合,タスク直後から30分後まで,50%MVC群の圧痛閾値はタスク前より上昇し,10%MVC群は低下する傾向を認めた.タスク直後と20分後における10%MVC群の圧痛閾値は50%MVC群よりも有意に低いことを示した(タスク直後:p=0.005, 20分後:p=0.038).50%MVC群の筋硬度はタスク直後のみ低下し,その後経時的に回復した.10%群はタスク直後から30分後まで変化を認めなかった.タスク直後において,50%MVC群の筋硬度は10%群よりも有意に低いことを示した(p<0.001).本研究により, 総負荷を規格化したタスクを実施した際,咬筋の圧痛閾値と筋硬度に異なる反応を生じることが示された. 長時間にわたる低強度の持続的なクレンチングは,圧痛閾値の低下を引き起こす可能性が示唆された.
【参考文献】
1) Satokawa C, Nishiyama A, Suzuki K, et al. Evaluation of tissue oxygen saturation of the masseter muscle during standardised teeth clenching. J Oral Rehabil 2020;47(1):19-26.